情景145【日曜日のココア。日曜日の朝】

 日曜日の朝に吹く柔らかい風が、道端を歩く私と街の空気をささやかにゆすった。

 早朝に開店するカフェに足を踏み入れる。カラン、と私を出迎える音が鳴り、カウンターでココアの注文を済ませた。


 ——朝のカフェって、とても静か。


 外の落ち着きある日差しと店内の人気の無さが、日曜日という空間が纏う雰囲気を物語っている。

 それから陽光豊かな店の奥に足を運ぶと、

「どうも。お早うございます」

 と、窓際のテーブル席……日曜日の空気に包まれる中から、こざっぱりとした秋の軽装に身を包む男性が声をかけてきた。私はそんな彼の斜め前の席に腰掛ける。

「おはようございます」

「今朝も日曜日ですね」

「ええ、すっかり」

 目の前の男性は、細いスクエアの眼鏡をかけて銀の縁を朝の日差しでさりげなく光らせていた。薄いベージュのハイネックが適度にゆるく収まっていて、清潔感を保ちつつ気安い雰囲気を醸し出している。

 男性はそっと息を吐くように言う。

「なにか、話のタネあります?」

「そうですね。では、私が最近気になっているこのネット記事の——」

 ココアを手元に妙な挨拶から始まる、一風変わったおしゃべりの会が始まった。

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