情景136【異郷、天の鏡】
飛行機で標高の高い街に降り立ってからはバスに乗り込む。一時間ほどガタガタと揺れる車内で過ごした。見ず知らずの女性が隣にとすっと座る。日本人ではなさそうだ。紫外線避けの帽子とサングラスがやたらと似合っている。帽子の後ろ口からは、結った後ろ髪が垂れていた。
——どこの国のひとだろう。
と、ふと思った。サングラスも実に堂に入っているから。
彼女の向こう——窓の外にあった山の中腹からの見晴らしに見入っていたところでバスが足を止めた。どうやら目的地に着いたらしい。
自分の足で目的地の大地を踏みしめたとき、“異国”というものをはじめて感じた。
降りた先には天地東西一面の青空が広がっている。頭上の天頂から足もとの大地、東の端から西の端まで、すべてが青空でできていた。
大地には薄く水が張られている。それが鏡となって、地平線から上の光を受け止めて伸ばすように、大地に鏡越しの青空を貼りつけていた。
音はない。青空を漂ういくつかの白雲が一方向へと流れていく。
途方もなく広がる空と空の狭間で、呼吸をするだけの自分がいた。
異郷の空気に包まれながら立ち尽くしている。
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