情景135【機上をゆく路】

 日本を飛び出てロサンゼルスを経由し、そのまま南アメリカ大陸に滑り込む。

 降り立ったとき、日本むこうよりさらにからっと冷えた空気を感じて、長袖の上に一枚羽織った。夏の暮れの日本を出て、南半球に来たのだから無理もない。

 ここから飛行機を乗り継ぎ、さらに標高の高い街、ラパスへと向かう。機上で徐々に太陽へと近づいていく自分を想像していたら、ふいに紫外線という言葉が脳裏によぎった。それで今さら日焼け止めはどこにしまったか、なんてことが気になりだす。


 ラパスに着いて以降はバスに乗って悪路を何時間も揺られるしかない——というのは昔の話で、現地に開設された空港を使えばものの一時間程度で目的地に着いてしまうという。それでさらにもう一度、一時間ほど空を飛んだ。


 旅行鞄を座席の下に置き、帽子を深々と被り、座ったままなめらかに目的地へと向かう旅路。雲を突っ切りながら、資源と技術が世界を覆っていくさまを想像する。

 窓の外でフラップがはためいていた。動翼が風を切る。

「キィン」という音が、聴こえてもいないのに耳の内で巡っている。

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