情景129【デートのあと】

 ——まさか、こうなるとは思わなかったな。


 街の片隅で空を見上げながらひとり、額に手を当てて事の成り行きを思い返していた。西日がすっと通り過ぎ、夕間暮れの空気が漂う。空は無言でこちらを見下ろしていた。しばらくすると夕日は遠くの山間に沈みかけ、空を薄くオレンジに染めていた陽光が立ち消える。薄橙のオーバーレイが音もなく消えた空は風を吸い込むようで、見上がればさっきよりもさらに高く見えた。

 蒸した夏の、夕なと夜の間にある、はざまの時間帯。

「やっちまったなァ……」

 しかし、我が事ながらため息がでるね。


 最近、仲良くなれた女の子がいて、その子とわざわざ納涼イベント中の商業施設にやってきた。冷房の効いた館内をひとくさり歩き通したあと、そこかしこにうろつく“イマドキ”や“流行り”を見て拾っては彼女へ話を振る。そうしてお互いの距離感をなんとなぁく計りながら歩いていたとき、たまたまエレベーター前で見かけたポスター……これが事の発端だった。


 スペシャル納涼企画のお化け屋敷が好評らしい。


 冗談だろうと思いつつも、エレベーターから出てくるカップルたちの繰り出す感想の嵐と色とりどりの表情を見た。

 無言のまま、彼女とエレベーターに乗り込んでしまった。

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