情景127【昼日中、田舎の匂い】
久方ぶりに、田舎に顔を出した。
取り立ててすることもなくて、この暑い中に散歩へと繰り出す。午前中は、扇風機とうちわの風に挟まれて過ごしていた。
山のふもとを散策する道すがら、畑仕事に精を出す人たちに挨拶をして、田んぼの間をなぞるように歩き、小川の流れ続ける様を眺め、誰かがこっそり拵えたであろう小さな橋を渡り、慣らされた砂利道を散策する……。照りつける日差しは自分の腕やふくらはぎを焼く。麦わら帽子が作る日影が普段よりも濃い影の色をしているように見えた。久しぶりに顔を合わせたご近所さんに挨拶を済ませて、帰宅する。
帰宅してからは、顔を洗い、畳に寝転がった。そのまま仰向けになる。天井の木目を目でなぞりつつ、実家の畳が醸すい草の匂いを鼻に通した。実家というものがつくる空気がおなかに充ちていく。そして目を閉じ、一日が過ぎ去っていく感触をその身に掴んでいた。そのままゆっくりとひと眠り眠るつもりでいる——。
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