情景125【カラン、カランと鳴る】

 台所にある食器棚の軽い戸を開けて、背の高い透き通ったグラスを手にとった。眠るように静かな電子レンジの上にトンと置き、冷蔵庫の柔らかくひっついた扉を開く。小さくボッと唸るような音がした。

 冷蔵庫からサイダーを、冷凍庫から氷を。ザッと氷を取り出す音。


 グラスに氷を二、三個ほど放り込んだ。氷とグラスとかぶつかり合う音は、単純で明快で爽やかで、あっという間に過ぎ去っていく。それが耳の内側で心地よく響いてくれる。好きな音だ。

 それからグラスにサイダーを注ぐ。しゅわしゅわって鳴る音に耳を傾けて、夏だよなと、改めて思った。


 サイダーを飲み干した後、グラスに残った氷をじっと見つめて、結露のついたグラスを左手に取りささやかにゆする。その音に聴き入っていた。

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