情景123【夏夜に伸びる白線の光】

 空を飛べるようになってから、しばらく経つ。

 飛べるのは決まって夜。そんなものだから、飛ぶのは晴れた日の夜と決めている。夜中だろうがぬるい風の吹く夏こそが、空を飛ぶにふさわしい季節だった。

 私は、そっと吸い込まれるように浮かび上がる。中空に立ち、足もとに白く光る線を伸ばした。


 光る白線を伝うように、歩いて空を飛ぶ。

 星の瞬く天頂を見上げ、夜陰に染められた地平線を見下ろし、浮かぶ自分の直下には深藍ふかあいに沈む街がある。

 中空の風は、地べたのそれよりも少しだけ冷ややか。


 空に浮かび光る白線の上を歩き、知った。

 夜空には薄い雲が潜んでいる。

 空には寒いところと熱いところがある。

 もう少し高いところへ行けば、全身を吹き飛ばすような風が吹いている。


 頭上に浮かぶ暗い雲のさらに奥で、星々はきらめいていた。

 空の先にある、宇宙。知れば知るほどに、その先を感じる。

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