情景97【半透明でおぼろげな】

 窓を閉め切って外を見ていた。

 そばに揺り椅子を寄せて身を任せてみる。

 雨脚の長い日。雨粒が窓ガラスの外側に一面はりついていた。その奥で穏やかに街の通りを湿らせつづける雨の、その音はこちらまで届かない。外の景色は、透明な窓ガラスの向こうにある降りしきる雨を受け、より瑞々しくなる庭の様子を無言で伝えてくれていた。


 窓ガラスに近づけば、おぼろげに、半透明の儚さで、自分の手の甲や指の背が映る。

 触れないように、そっと指を近づけた。

 ガラスと私とのあいだで、空気はひんやりとしている。

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