情景91【かさなる雲】
雲には、近い雲と遠い雲がある。
青く点滅する信号機が目について、その奥にあった白っぽい昼下がりの空が目についた。横断歩道の前に手持ち無沙汰で、目の前をぞろぞろと通り過ぎていく自動車をぼんやりと眺めている。
それから、空のつづく上の方に目をひかれた。
雨上がりだからか、雲の動きが早い。いつもよりも近い高さで、なだらかに動いていた。
そしてその奥に、ゆったりと動く雲がある。
早く動く近い雲と、のんびり動く遠い雲。
空に奥行きを感じられた。
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