情景88【光明の中で塵を掴む】
朝が来ていた。きっと、外の天気は晴れなのだろう。
日の光が窓を抜けて、部屋の中へと伸びてきた。重さのない四角い光の白が、閉じていた私のまぶたを舐める。まぶたに、無音の赤みが走った。
太陽に起こされる朝。
からだに昨日の疲れを残したまま、あくびをして起き上がる。また、一日が始まってしまった。今朝の私の部屋は静かで、カーテンの隙間をぬって降った何本かの陽光の筋が、私に今日のはじまりを知らせてくれる。
室内に降る陽光の筋の中に、ちりが漂っていた。
掴もうと思った。思わず、手が伸びる。無言で、気がついたときにはもう、光の筋の中で空を握りしめていた。
開けた手のひらにはなにもない。
ただ、陽に触れた手から早朝の温かみを感じる。
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