情景86【夜陰の風】

 昨日の昼はだいぶ暑かった。もうじき、本格的に夏が来る。

 真夏へと移りゆく前の、初夏の過ごしやすさを残したままでの快晴のさなか、背中にじわりと汗をかいていた。

 帰宅したら、いの一番に窓を開ける。網戸越しにやってくる風は、涼を取れるくらいにはそよいでくれるだろうか。暑すぎない時期のなかで外からの風を期待していた。


 それから、ソファに腰掛けて読書に勤しみ、パソコンを扱い、紅茶を淹れて、ひと眠りする。そうして時を忘れていたなかでふと思った。

 ――夜はやけに冷えるな。

 外の暗がりからそよいでくる風は、昼と違ってずいぶんとささやかで、静かで……肌にしみる。

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