情景84【外の喧騒】

 自動ドアを境目にして、音の流れが変わる。


 白い簡素なカウンターでじっと立ち続けるなか、そんなことを思っていた。

 自動ドアが閉じたままだと外の音が聴こえない。

 透明な自動ドアの向こうでは、人も自転車も車も意気揚々と行き交っていた。 


 だけど、すぐそばを通るハイブリッドカーがタイヤでアスファルトを擦る走行音も、歩行者信号が青信号へ変わったときに流れる気のないメロディも、自動ドアが閉じているうちは私の鼓膜まで届かない。


 自動ドアが開き、お客さんを出迎える鈴の音が鳴った。

 息を吹き返したかのように外の音が吹き込んでくる。音が風に乗って巡っていた。

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