情景81【雪の窓】
雪の降りだす季節は、窓に触れるのもイヤだった。
触れると、指の腹にしんと冷えた感触が走ってから、じわりと水滴が乗る。そして指が窓にひっつく。窓ガラスにほっと息を吐いてみれば、一瞬だけ白い円ができてすぐに消える。その奥に、うす暗く半透明でおぼろげな自分のカオが映っていた。
そのさらに奥で、パウダースノーが暗がりに白くちらつきながら降り続ける。
外に出るなと言われているような気がするし、そもそも外出する気もおきない。
日が暮れる前、今日も雪が降っていたのを呆れながら確認して、カーテンを閉める。雨戸って、ウチはないけど、アレがあったらちょっとは寒さも和らぐのかな。
そんなことを思っていたら、上京時代に仲良くなった九州の友達から、メッセージがきた。
『今日、雪つもった!』
そうか。
『気分があがる!』
そうか……。
それって、そっちでは嬉しいことなの?
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