情景80【朝の気忙しさ】

 朝。まぶたに触れる日差しの柔らかな熱を感じて目を覚ました。続いて、朝食の匂いが自分の鼻をくすぐる。

 日差しと匂いに誘われて体を起こし、洗面所で顔を洗ってリビングに顔を出した。

 早朝の気忙しさ。結構、好きかな。


 炊き物の香りが立つ。じっくり焼いて皮の逆立つ鮭の匂いがする。慌ただしくて芳しい朝の食卓の空気がそこに漂っていた。

 母は台所に立って汁物に味噌を溶かしている。父は、ダイニングテーブルの天板についたちりや埃を軽く拭き取り、箸や小皿を並べている。

 母が私を見て言った。

「目ヤニくらい取ってきなさい」

 あれ? カオはさっき洗ったんだけど。

 ちょっと目元に触れてみた。

 うん。洗面所に行ってきます。

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