情景68【春のそよ風。花のこだま】
家を出て学校へと向かう道すがら、視線を頭上の青空に合わせて高く息を吸う。鼻と口を通っておなかに溜まる空気は、柔らかくて陽射しの熱をかすかに含んでいて朝の匂いがした。
角を曲がれば母校が視界に入る。そばをシルバーのハイブリッドセダンが、タイヤの音だけを残して通り過ぎていった。
そのあと、空のまえの方から響いてくる朝の合唱。
春のうららの——なんとか。
滝廉太郎の『花』を、校舎がご機嫌に歌い上げている。それは春のそよ風に乗って、こだまするように自分の周りを繰り返し行き来していた。
つい、口ずさんでしまう自分がいる。
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