情景67【朝の支度】
その日の朝は、かぶった布団越しに冷めた空気が伝わってくるほど寒かった。寒い朝は、外の音がよく響く。なにかを叩き割る乾いた音は、おじいちゃんが薪を割る音だとすぐにわかった。
布団からのそのそと這い出て、木の戸を力なく開ける。畳の寝室から居間に出ると、土間の玄関のあたりに陽が当たり始めるころだった。土間では、割烹着に身を包んだ母が、まだ二歳の妹を背負ったまま、朝の支度をしている。外で薪を割っていたおじいちゃんが、土間に入ってきた。
「今朝はやけに冷えるねェ」
すると、野菜のぐつぐつと煮えた鍋に味噌を溶いていた母が、
「あらあら、そうですね」
と言って、手際よくストーブに火を点けた。
「ありがとう」
おじいちゃんは腰を下ろし、今唸り始めたばかりのストーブに手を当てている。
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