情景63【乾いた記憶。野晒しの部屋】
その部屋は野晒しと形容できた。
大昔、新聞記者がネタにありつくため昼夜詰めていたという部屋を訪れる。今は誰も足を運ばなくなり、ただのぽっかりと空いた空間になってそこに取り残されていた。
視線を壁側にやると、古ぼけた机の上に、当時使われていたであろうファクシミリ送信機がそのままにしてある。無論、電気も電話線も通っていない。
部屋の奥で佇んでいた麻雀卓は、いたるところすり切れていて、当時はそこで大活躍したであろう様相が見てとれた。
それも、かつてのこと。
いまや、ひとつの閉ざされた部屋に大勢の人間が詰め寄り、身内で情報を交換しあうような時代ではない。目を閉じて耳をすますと、上階の軋む音がする。もはやこの部屋には、風も音もない。ただ窓の向こうから、陽光だけが降り注いでいた。
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