情景54【虹、出たかな】

 茜色に照らされた駅の階段で、天気雨が止むのを待っていた。顔を上げた先には、青と茜色の狭間のような、うす紫の空がある。

 ——夕の天気雨。ぼんやりと、夕焼けが泣いている様を眺めていた。


 しばらくすると、西日が急に強くなる。

「雨、あがるか」

 つい、口に出た。すると、隣でスマホに視線を落としていた女の子が、中空の方に目を向ける。

「虹、出ますかね」

「たぶん」

 きっと、目を凝らせば見えるだろう。

 山の稜線の少しうえに浮かぶ、焼き付くような薄黄色の太陽が、その子の顔を覗き込むように照らしていた。

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