情景48【女子には支度があるから】

 女子には支度の時間が必要。

 ベッドでミノムシのように毛布をくるくると身にまといながら、そんなことを思う。

 なぜって、単純なことで、そんなときにかぎって彼から、『今からお茶しませんか』なんてお誘いが来てしまったのだ。


 手が止まる。

 嬉しいけれども、待って。急だし。

 嬉しくても、いきなりはムリ。今からは、ちょっとムリ。

 せめて二時間後とかいかがかな。そんなことを思いながら、返信を打った。

 ——いま外出中で、夕方頃なら。

 ベッドの上でそう返した。

『では、夕方に』

 ——はい。

 ベッドの上でひとり、すっぴんの私は胸をなで下ろす。


 嬉しい。嬉しいけれども、タイミングとか、あるじゃないですか。

 今すぐ出てきてとか、ふざけないでほしい。


 だって支度とかあるじゃない。

 私、まゆ毛ないんだから。

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