情景46【人工の木漏れ灯】
人工の太陽を見たことがあるか?
会社の同僚に、そんなことを言い放ったやつがいた。
あるわけがないと答えれば、そいつは得意げに、
「酔っぱらって深夜の街路を歩いているとな。木漏れ灯を見ることがあるんだ」
なんてことを言う。
まだ酔っぱらっているのか、なんて言って笑って流したが、その日の深夜に自分も似た境遇に陥った。
酒に酔い、深夜の道を力なく歩いていると、猫背で街を漂う自分の上から、白い日差しが降ってくる。日差しは自分の足元で点々と揺らめいていて、見上げた先にあるそれは枝葉が陽光を遮る木漏れ日そのものだった。
街路樹の風になびく枝葉の奥で、街灯が煌々と明るい。
なんだ、「木漏れ灯」とはそんなものか。
と思いながら、笑った。
深夜に思わぬ木漏れ灯をみたことで、妙な満足感が酔いに混じって沸き始める。
——悪くはない。ただ、太陽は言い過ぎではないか。そんなことを思いながら、中空を眺めつつ帰り途をゆく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます