情景45【記憶のうるおい。ひらけた代わりに】

 ひらけた公園で、親子がキャッチボール。バレーボール。サッカーのPKごっこ。

 いい加減、遊び疲れたのだろうか。その子がもう帰ろうと、そんな気配を醸し出して、父親はそれを察して子の方に寄った。彼が手をひいて歩き出す。うっかり、目が合った。

 すると彼がポツリとつぶやく。

「昔は、ありましたよね」

 そう言い残し、そのまま歩いて角を曲がって消えた。


 ——ええ。そうですね。


 それからぽつんと、公園にひとり立つ。


 ひらけたこの公園には今、何も遊具がない。

 滑り台もブランコも鉄棒も。


 かつて子どもだった私が、時を共にしたそれらは、解体されてどこかへと行ってしまった。

 ——静かになったな。

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