情景43【早春】
昼下がり。山の麓で、遠くの住宅街を見渡していた。
自分の背にある山の稜線をくだるようにして、陽射しが覆い被さってくる。陽光はうなじにほのかな暖かみを与えてくれた。
昨日までの冬の気配は、いったいどこへ去ってしまったのだろう。陽射しを追いかけるようにして、春の風までもが自分を追い抜いていく。
後ろで高くまとめていた黒髪の束が、陽を浴びてうっすら茶褐色に染まって映った。毛先が瞳の前で風に靡いて踊る。頬に触れた。そよぐ風の匂いに、芽吹きのかぐわしさが混じる。
——風が鳴っていた。
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