情景41【霧雨。】

 障子を開け、さらに硝子窓を開けると網戸越しに宵闇の湿った空気がそよいだ。深夜の長い霧雨の中、目を凝らせば花びらが雨滴をはじいているのがわかる。冬の乾燥した時期にしては雨足が長く、この時節らしからぬ湿潤な空気を漂わせていた。口で軽く呼吸すると、外の匂いをたっぷりと含んでいるのがわかる。


 朝。今度は縁側に出ると、外は霧に包まれていた。

 雨音はない。ただ、靄に包まれけぶる景色の奥に、うつろうひとや木々の影がうっすらとのぞめた。その影のゆらぐ。そこにかすかな生命の存在を感じ取っていた。

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