情景30【朝凪】
陽ざしをたっぷりと浴びて、それにひかれるようにして上を見た。
この日の空は雲ひとつない。見上げれば高く伸びるように、天頂に至るまで青かった。
じっと視線を真上にあげて、それを眺め続けるうちに、眼上の青が本当に青だったのかと、青とは果たしてどんな色だったかと。そんなことが不思議に思えてくるほど、空はどこまでも広がっている。
自分と空との間にはなにもない。そこには音すらもなかった。
本当に、静かで好い天気だ。
耳の奥で、鳴っていないはずの音が鼓膜を振るわせている。
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