情景28【空を見ずに空を知る】

 ソファに腰掛けて、ハードカバーの小説を少しずつ読み進める。背のレースカーテン越しに天頂からの白い日差しを浴びていた。

 ぱらり、ぱらりと一ページずつ。継続は力とはあるようで、しばらく読み進めているうちに、


 ——もうそろそろ半分だな。


 ぼんやりながら、そこまで至っていたことに気づく。紙色がうっすらと、撥ねるほど鮮やかな白から、染み入る橙に変化していた。


 空を見ずに、空の様子を知る。


 空模様の移り変わりの早さに改めて驚いた。

 その夕の色もまた、橙から薄紫へ。それもやがて深い青に染められていくだろう。

 「ふける」とは、よく言ったものだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る