情景24【午前中の住宅街】

 はじめて降り立った駅。そこから徒歩で国道に出る近道を探していた。

 様々な交通手段が交差する駅の慌ただしい空気を他所に、私は立ち止まり、スマートフォンで経路を調べる。行先までまっすぐ視線をやると、目の前にあるのは住宅街。始点と終点を直線でつないでしまえば、どうやら住宅街に入るらしい。なら、このまま突っ切ってしまえばいいかなと思って足を踏み入れた。


 そうして歩き出し、駅近辺の賑わいから少し外れたあたりで気づく。

「……とても、静か」

 駅を出るまで私の耳を揺さぶっていた音のつぶてがどこにもない。

 あるとしたら、風が私の鼓膜を打つか、郵便のバイクが過ぎ去ったときの音くらいだった。

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