情景16【黒耀・前編】

 暗がりの中に在る自分を感じる。

 目を開いているつもりだが、先に何も見えず、見上げても見下ろしても捉えられるものは何もない。

 しんと静まった闇の中で、しだいに視界がゆらぎ、前後左右すらねじ曲がり、世界が反転するかのような感触に囚われていく……。


 ここで足を止めてはいけない。

 そう思って右足を一歩踏み出せば、水を蹴る感触が残った。


 泉の浅瀬かなにかがあるのだろうか。

 それで、自分が「立っている」ということに気づいた。

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