情景14【彼はベンチに腰掛けたまま】

 俺は街の片隅でベンチに腰掛けたまま、まっすぐ空を見上げていた。


 真上には青い空があった。目が痛くなるほど青く澄んでいて、それはどうしようもない。顎をひいて視線を前に向けると、歩行者天国の街道を慌ただしくを行き交う雑多な人通りが目についた。そこに漂う冷めた無機質な感触が、さっきの天頂を眺めて得た透き通った感じをすべて浚っていくような気がする。


 たまらず、つい、顔を左隣に向けた。

 俺の隣には、ひとりの女の子が座っている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る