3-H組

もっくん

第1話 女神っぽい何かさんの場合

「あなたたちはこのまま死を迎えます」


私は彼らと彼女に告げる


「バスは学園を向かうことなく崖から落ち、そのまま全員死を迎えます」


全てを平等に、

生きる全ての物に与える側なのだから感情移入はしない。

でも、なんとなく嫌な気分くらいにはなる。


「しかし…あなたたちはここで命尽きるには惜しい縁を有しています。

だから別の世界で生きてみませんか?」


このフレーズも何度も、何度も生物に告げた。

死を享受する物。

別の生き物として生を希望する物。

彼らと彼女の場合は…


「え…あ、あの?喜ぶのは良いんですが、あのもう少しお静かに…」


めっちゃテンション高かった

生徒と先生一同が肩を組んで円陣を組んでいる

何人かは歓喜に涙を濡らし、なんか正座して叫んでいる者もいるし。

…そのお祈りは別の神様ですから、正直勘弁して貰いたい。

正直ちょっと引いた。


「あ、あの…希望するのであれば詳細を話したいのでもう少し抑えて…」


はい!とかゔぁい!など言語になっていないような返事が聞こえるが…

目が爛々と輝き過ぎて少し怖い。


「んん…別の世界、についてですが、剣と魔法の世界、文化や思想、

生活レベルは中世以降の物語などを想像していただければ良いでしょう。

多種多様な種族が共生し、争い、生きている世界です。

…もちろん危険もあります。現在は魔王が復活しており、

1000年程の戦争状態でもあります。

可能であれば魔王討伐をして世を平和に導いて頂きたい。

その為のジョブとスキルを与え、1つだけ願い事を叶えます。

ここまでで何か質問は?…もちろん拒否も受け付けます」


そこまで話終えたあとは…あんまり思い出したく無い。


「なんで私の胸の話なんですか!そんな事に願い事を使わないで下さい!」


「…1から100個に増やすとはなしです。」


「元の世界の価値観を持ち込みたい?…まぁ流石にその願い事は予想外ですが…

出来ない事は無いですね。ん?フェチを流行らせておいて欲しい?…ん?」


「え?トイレはどんな感じなのか?みなさん魔法で割と綺麗にしていますよ?

都市部に行けば上下水も魔法で設備が整っています。

あなた方の世界より公衆衛生はしっかりしているかもしれませんね…

待って?なんでがっかりしているんですか?ねぇ!」


「荷物は今持っているものを持っていくことが出来ますよ?え?

逆に置いて行きたい物がある?どれでしょう…A○じゃねぇか!」


後半はだいぶ口調が乱れていた気がしますが…

もう思い出すのはやめましょう。


「もう話が進まないので私の方であなた達のジョブとスキルを

こちら側で決定させて頂きますので、願い事だけお願いしま…

えぇ!じゃありません、次行きますよ!次!」


私はこうして彼らと彼女に力を与えた

長い、長い魔王との戦いで力尽きないように、誰一人欠けないように

少しでも生きていられるように。私の祈りが届きますように。

自分の矛盾に気づかないようフリをしながら…


…と綺麗に締めるはずだったのだが、彼らと彼女は1年で魔王を討伐し、

さっさと平和に世界を暮らし始めている。

そんな後日談の話


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3-H組 もっくん @mokkun0089

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