第3話 My motivation to work awakens—— 俺、働く気になる。

俺が〝エロゲのような世界この地〟に降臨して、一カ月の時が過ぎた。


「金を稼ごう」


ここらいで一番大きな街、ヘルムデナブルの大通りのど真ん中。


手に焼きそばやら、串焼きやら、日用品やらを大量に抱えつつ。俺は誰に聞かせるでもなく、そう呟いた。


「待てコラァーっ‼︎」


「はぁはぁ—— ご、ごめんなしゃい、ごめんなしゃい、ごめんなしゃいーっ」


「………」


こんな言葉を呟いたりしたのは、別にアレやコレやと買いすぎて、金に困ったからという訳ではない。 


手に抱え持つ大量の品々。


これらは〝俺の金〟で買ったモノではない。


これらの品は、屋台の気の良いおっちゃんやら。


『お嬢ちゃん可愛いねぇ〜タダで良いよっ‼︎その代わり、おじさんと…』


『ありがとうっ!おっちゃん。じゃっ‼︎』


『ちょっ、待っ‼︎』


道ゆく若いナンパな兄ちゃんやら。


『君、可愛いねぇ〜!僕ちゃんが何でも、奢ってあげるよーっ!このネックレスなんて、君に似合うんじゃないかぁ〜い!はい、プレゼンツ フォーユんむっ♡』


『ありがとうっ!兄ちゃん。わーい、換金っ!換金っ!』


『ちょっ待っ‼︎』


スラム街の純真な心を持った。痩せっこけたストリートチルドレンの子やらが、俺に貢いでくれたモノだ。


『お姉ちゃん、これ、あげゆっ‼︎食べてっ』


『うぐぅっ…‼︎』


『お姉ちゃ——』


『ゴラァーーっ‼︎』


『っ‼︎お姉ちゃんごめんなしゃい!僕、いかなきゃっ‼︎』


『待てこのクソガキーーっ‼︎』


『ごめんなしゃい、ごめんなしゃい、ごめんなしゃいっ‼︎』


『…………』


金などこの一ヶ月、宿代ぐらいでしか使ってない。


それだって、二回に一回はタダだ。


最初に女神様から貰ったお金は、まったく減ってない。


むしろ増えた。


旅の道の途中、一緒になった—— 大商人やら、騎士団やら、高ランク冒険者とかやらが『女性の一人旅は、なにかと大変でしょう…』と、俺にお小遣いをくれたのだ。


路銀は尽きるどころ、増える一方だった。


「金を稼ごう」


とても大事な事だ、2回言う。


大事な事だからな…当然だ。


「待てコラァーっ‼︎」


「はぁはぁ—— ご、ごめんなしゃい、ごめんなしゃい、ごめんなしゃいーっ」


「………」


『美少女のカラダは得だなぁ〜っ‼︎いっさい働かなくても食っていけるぜ〜っ‼︎』なんて、バカみたいに、はしゃいでいた俺も…。


ガリガリに痩せっこけた。食うに困っているようなスラムの子から——


『お姉ちゃん、これ、あげゆっ‼︎食べてっ』


なんて言われながら、屋台から掻っ払って来た。串焼きなんて渡されたら、さすがに胸が痛む…。


「待てコラァーっ‼︎」


「はぁはぁ—— ご、ごめんなしゃい、ごめんなしゃい、ごめんなしゃいーっ」


「………」


だから、金を稼ごう…。


「—— 自分の力で」


やってやる。


俺も男だ(中身は)っ‼︎


やってやるぜっ‼︎


「まずは、そうだな…」


〝アソコ〟に行ってみよう。


「待てコラァーっ‼︎」


「はぁはぁ—— ご、ごめんなしゃい、ごめんなしゃい、ごめんなしゃいーっ」


………。


「あ、あの、俺が払いますから…」


こうして、俺は〝エロゲのような世界〟に来て一カ月目にして、はじめて—— 〝労働意欲〟に目醒めた。


「俺は働いて—— 金を稼ぐっ‼︎」


My motivation to work awakens—— 俺、働く気になる。

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トランスセクシャル ファンタジーは〝エロゲ主人公(TS)〟&〝エロゲヒロインズ〟達と共にっ⁉︎ 咆哮音痴 @tanakanokanata

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