おまけ小話 第2.5話 俺の聖魔剣 ゼクスカリバーゲイボルグロンギヌスカリバーン誕生秘話—— その時、事件が起こった。

これは、俺が〝エロゲのような世界この地〟に降り立って。


はじめて泊まった宿屋で起こった、事件出来事だ…。




「おお、おお…おぉぉぉっ‼︎」


半日歩き続け、ようやく小さな町に辿り着く事ができた俺は、道行く人に尋ね。


お勧めされた『淫魔淑女亭』という宿屋に泊まる事にした。


宿屋を見つけ、扉をくぐり。受付で台帳に名前を記入—— 当然、俺はこちらの世界の文字なんて知らなかったが、こういった場面で起こる異世界モノのテンプレ。


〝勝手にこちらの世界の文字に変化〟が、発動するだろうと思い。


俺は宿屋の台帳に『哉太 田中』と、日本語で書いた。


すると思った通り、テンプレが発動。


俺が日本語で書いた文字は、こちらの世界の文字に変化していた—— が。


何故か『 Канатаカナタ Танаферタナファー』と、文字どころか、名前まで変化していて驚かされた。


名前の記入が終わり。宿代を前払いで払い、泊まる部屋の鍵を受け取り。


教えられた部屋へ行こうとすると、受付の女の子に、『ちょうど今、夕食の準備がすんだところで。いつでも食事、出せますけど…どうしますお客さん?』と言われ——


『そういえば美少女ボディーに受肉してから、メシを一度も食っていないな…』


——と、思い出し。思い出したら途端にグー、グーと、腹が空腹を訴えてきたので。受付の女の子に今すぐ食べると言って、食堂でたらふくメシを食った。


メシを食った後は、お湯をもらって部屋へ行き。歩きまわって汗をかいたカラダを拭き—— お、女の子のカラダってしゅごい…。


と—— エロいTSモノなら、一回はやるであろう体験を、いろいろとすませ(アタマがパーになるとこだった…と、だけ言っておこう)。


ふと、失った我が子マイサンの事を思い出し胸が痛み—— と、ここでふと。


『あれ、ここが〝エロゲのような世界〟なら、もしかして失った我が子マイサンも生やせんじゃね?』


と、いう考えが頭に浮かび。


いろいろと試してみたところ—— わりと簡単に生やす事ができた。


「………ごくり」


しかも、元の肉体よりも数倍立派な我が子マイサンが…。


いや、なんだこれ?


なんだよ、これっ⁉︎


おかしいだろっ‼︎


おま、おまえっ‼︎


「立派すぎんだろ…」


両手で握っても、なお余る。


もはやそれはチ○コというより——


「おまえ、もはや〝剣〟だよ…」


俺は…。


とんでもないバケモノを生み出してしまったっ‼︎


「やべぇ、やべぇよ…。とんでもなく、やべぇっ‼︎」


やべぇやべぇ!


俺がそう、アホみたいに言いながらはしゃぎ。


『そうだ、この〝剣〟に名前をつけようっ‼︎』と、下半身とバカ丸出しにしていた。


まさに、その時——〝ガチャッ〟


「あのぉ〜お客さん。もう、夜も遅いので…もう少し、静かにしてもらえる—— とっ⁉︎」


「あ、」


事件が起こった。


わずかに開いた部屋の扉の隙間から、ひょこっと頭だけ覗かせた受付にいた女の子が、目をクワっと見開いたまま固まる。


俺も突然の事に、アタマが真っ白になって固まる。


時が止まったかのように動かない二人。


「………っ‼︎いや、あ、あの…そのぉ」


なんとか再起動し。


さて、どう言い訳をしようかと考えていると。


受付にいた女の子が部屋の中へと入って来て、服をシュルリ…と、肌けさせ——


「覚悟はできてます…」


「なんのっ⁉︎」


おかしな事を言いはじめた。


「すみません…。お客さんの事、『めちゃくちゃ美人なうまそうな美少女が泊まりに来やがったぜっ!ヒャッハーッ‼︎』と、思ってたんですけど…。まさか、そんな〝凶悪な武器〟をお持ちの、男性の方だっただなんて…ぽっ」


「え…あ゛‼︎」


俺は受付にいた女の子に言われ、呆気にとられて〝剣〟を出しっぱなしにしていた事を思い出し。


慌てベッドに置いてあった枕で〝剣〟を隠した。


てか、そんな風に思ってたのかよこの娘⁉︎


こわっ‼︎


「さぁ、決心が鈍るまえに…やっちゃって下さいっ‼︎」


「何をだよっ⁉︎」


と、ギャーギャーと二人で『ヤレ』だの『ヤラない』だの『じゃあ、わたしがヤリますっ‼︎』だの騒いでいると——


「アンタたちっ!何を先から騒いでいるんだいっ‼︎他の客に迷惑だよっ‼︎」


「お母さんっ⁉︎」


「す、すみませんっ‼︎」


女将さんに怒られてしまった。


どうやら受付していた女の子は、この宿屋の娘さんらしい。


「アンタはなんて格好してんだいっ‼︎この、バカ娘がっ‼︎」


「おか、お母さんっ‼︎ちょっ、待ってっ‼︎まだ、まだ終わってないか—— ぐふぅっ⁉︎」


怒られても、部屋から出て行こうとしなかった娘さんは、女将さんに腹を殴られた。


ズルズルと引きずられ、ポイっと部屋の外へと投げ捨てられる娘さん。


「アンタもさっさと寝——」


女将さんの勢いに驚き。ボケっと部屋のすみで固まっていると、ズンズンと近寄ってきた女将さんに手にもっていた枕を奪い取られ——


「なっ⁉︎」


「あ、」


隠していた〝剣〟が露わになった。


空気が凍りつく。


「………」


「あ、あの…こ、コレはですねぇ…」


思考停止してしまいそうなアタマを、なんとか気持ちを奮い立たせて動かし。


俺がこの場を切り抜けようと、必死に思考を巡らせていると——


「ふぅ…」


「お、女将さん…?」


女将さんに動きがあった。


シュルリ…と服を肌けさせ——


「覚悟ならできてるよ…」


「なんのっ⁉︎」


おかしな事を言いはじめた。


「その代わり、娘は勘弁しておくれ」


「お母さんっ‼︎」


とても良い顔で部屋の扉の前に立ち、娘を守る盾になろうとする女将さん。


女将さんの後ろから『お母さんズルイっ‼︎わたしが先に目をつけたんだからねっ‼︎』と、いう声が聞こえてきたが…。


聞こえなかった事にしよう。


部屋の扉の前で母と娘が『ズルい』『ズルくない』『ズルい』『ズルくない』『なら、いっそ二人で…』『それはそれでアリだねぇ…』などと、言い争いを続けていると、ズンズンと誰かが近づいてくる足音がして——


「お前たちは先から、何をやっているんだっ」


と—— 扉の外から男の声が聞こえてきた。


「ア、アンタっ⁉︎」


「お父さんっ⁉︎」


どうやら、この宿屋の主人がやって来たようだ。


正直、助かったと思った。


「お客さんに迷惑だろう」


「ご、ごめんよアンタぁ…」


「ごめんなさい…」


ご主人に叱られ、バツが悪そうに謝罪し—— 部屋から出ていく母と娘。


扉の前に陣取っていた母と娘が出ていくと、宿屋の主人がスッと部屋の中へと入って来た。


「お客さん、うちの者が迷惑をかけたようですま——なぁっ⁉︎」


「あ、いえ、こちらこ……そ?」


どうやら俺に謝罪しに来たみたいだが、何故か目をクワっと見開き、固まって動かない。


「………」


「?」


固まって、動かないご主人。


俺が不思議に思っていると、ご主人に動きがあった。


ご主人はシュルリ…と、服を肌けさせ——


「覚悟はできている」


「なんの⁉︎—— て、またかっ‼︎」


おかしな事を言いはじめた。


「俺が犠牲になろう。だから、妻と娘は許して欲しい…」


「はぁ?—— あっ‼︎」


『コイツ何言ってんだ…?』と訝しんでいると、視線がある一点を捉えて動かない事に気づき。そこへ目をやると—— 出しっぱなしのとても立派な〝剣〟が…。


「さぁ、好きにしてくれ。俺は、どうなろうと構わない…妻と娘が無事ならば」


そう言って、尻を突き出す宿屋の主人。


「おうっふぅ…」


「アンターーっ‼︎」


「お父さんっ‼︎」


『もう、何も考えたくない…』と、思考停止しかけるアタマを、心が受け入れそうになった時。部屋の外にいた女将さんと娘さんが雪崩れ込んできた。


『お前たちは引っ込んでいろいろっ‼︎』『バカ言ってんじゃないよっ‼︎』『わたしが先に目をつけたんだからねっ‼︎』などと言い争いをはじめた三人。


もう嫌だ。


俺は宿屋の親子三人に、サッと背をむけ。脱ぎ捨てていた服を引っ掴み——


「あばよっ‼︎」


「「「あぁっ‼︎」」」


そう別れを告げ、部屋の窓から外へと飛び出し。


暗い夜の町を、駆け抜けた。



ちなみに…。


〝剣〟の名前は考えに考え。


煮詰めに煮詰め。


二転三転、七転八倒し。


聖魔剣 ゼクスカリバーゲイボルグロンギヌスカリバーンと名付けたが——


長くなり過ぎたので『ゼルグギヌスバーン聖魔剣』と呼ぶ事にした。


なに?


まだ長いって?


10文字以内だから、勘弁してくれ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る