文学の宣誓

牧 鏡八

文学の宣誓

文学は鏡である。



モノトーンの文字の羅列は、読む人と、読む人の背景を、はっきり写し出す。人は読書を通じて、己と己の環境を深く知ることができる。それは鏡を見て、初めて自分の顔を知るようなものだ。いや、文学はもっと深いところを写す。文学は、人の内面や背景を写し出す鏡だ。


人は読書するとき、様々な思いや考えを抱く。好感、興奮、悲嘆、憎悪、同意、反感、迷い……鏡に反射するがごとき反応は、深い内省を通して、己を知り、そして、社会を知り、世界を知ることに繋がる。そして、心に生じた反応を深く掘り下げついに発見したことは、未知なる一歩への原動力足り得るものだ。


読者にとって文学は、己の奥底と背景を露わにし、自らを探求して理解し、良い夜明けを迎えるための絶好の機会である。



一方で、作者の責任は重い。歪んだ鏡は人を歪める。それもまた、悪魔的な醍醐味であるかもしれないが――決して褒められたことではない。かと言って、当たり障りなく善良なことばかり書いては、まさにフィクションである。


作家たる者、己の信ずる"正しい"道を、謙虚に、かつ自信を持って行くべきなのだ。





文学は鏡である。

欲を言えば、より良い人間と、より良い社会を育める鏡でありたいものだ。






令和2年1月1日

牧 鏡八

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