アリスの『白雪姫』(2)

 白雪姫は18歳になり。本日、お城では10年に1度の地下室の整理の日。いる、いらない仕分けし、いらなくなったものは国民へ払下げ、国民はこれを楽しみにしている。


 1週間かけての大仕事が始まり。地下室から大広間にいろんな物を持ってくる家来たち。今回から王妃はこの整理に立ち会うことになり、上役と一緒になって、いる、いらない仕分けをし。その様子を白雪姫は、少しはなれたところから見学していた。

 予定通りに1週間で地下室の整理は終わり、家来たち皆疲れた様子だが。そんな中、王妃は気になることが。地下室は全部で6部屋ある。しかし、1部屋だけ2重に頑丈そうな鍵がかかっている。他の地下室の鍵と比べてもまるで違う鍵。ここだけは倉庫整理の対象外になっていた。何故この部屋だけが倉庫整理の対象外なのか、その訳を知らない王妃は上役に聞いた。

 すると、上役もその訳を知らないと言う。ただ、この部屋は開かずの間と言って、この部屋が閉ざされて、今年でちょうど100年目にあたり。王からこの部屋は絶対に開けてはならぬと、きつく言われていた。


 地下倉庫の整理から数日が経ち。開かずの間から物音がしたと、家来が王に報告をした。しかし、王は気のせいだと言い。隣にいた王妃は、念の為に確認した方がいいと言う。

 王は、上役に鍵を渡し確認するように言い、くれぐれも木箱には触らぬようにと言った。


 上役は家来1人を連れ、その後ろには王妃も同行し。家来1人を先頭にランプを待ち、3人は地下室へ。

 階段を下り、ゆっくりと進み。開かずの間は、他の地下室の部屋よりも更に下ったところにあり。そこには開かず間の1部屋だけ。

 3人は開かずの間の扉の前に来ると。家来が扉に耳をあて、音がしないか聞いてみる。何も音はしない。やはり、気のせいだったか、そう思う上役だが、念の為に中を調べることに。上役は鍵を開け、ゆっくりと扉を開けた。

 光がとざれた地下室、真っ暗で薄気味悪い部屋に、家来が先にランプをかざしながら入り。中は狭く、絵をかざる額縁くらい大きさの木箱が1つ、壁に寄りかかるよう立てかけてある。それ以外は、辺りを見るが何にもない。ひんやりとした空間にぽつんと木箱だけ。

 家来はランプをかざし、目視で木箱を確認するが開いた形跡もない。特に問題はない。

 その時、王妃が部屋の中に入って来た。何か気になるのか、家来の持つランプを借り。木箱の前に行き、しゃがみ、ランプをかざし、ほこりを取り除く為に息を吹きかけた。

 すると、そこには文字が。ここにこの鏡を封印すると書いてある。そして、年号が刻まれ、今年でちょうど100年経っている。不思議と木箱の腐食は全くない。

 その時、王妃は誰かの視線を感じ。立ち上がり辺りを見ても、上役と家来だけ。気のせいだと王妃は思い。3人はこの部屋を出ると、上役は鍵をかけた。何事もなく、よかったと思う王妃。


 その夜、開かずの間では。

 木箱の前に立つ王妃。ランプの灯りを頼りに、手に何か持ち、木箱の釘を抜き始め。王妃は全部の釘を抜き、そこに現れた鏡を王妃はハンカチで鏡を拭き。鏡の中から女性の顔が現れた。

「王妃、ご苦労」

「いいえ、とんでもありません。鏡の女王様」

「100年ぶりの世界、早く見たものだ。おっと、焦りは禁物。もう二度とあんなヘマはしない。いまいましいあの王女、わらわを封印し、木箱に閉じ込めたこの恨み、必ずはらす!」


 あの時既に、王妃は鏡の女王に操られていた。

「……ここは何処だ? 何故、真っ暗なのだ。そうだ、思い出した。あの時、王女がわらわを木箱に閉じ込め封印した。封印さえとければ、次こそはこの国を操ってやる!」

 王妃は開かずの間で木箱を見ている。

「そこにいるのは誰だ!? わらわの声が聞こえないのか……!? 何!? 王妃だと……!?」

 王妃は、ほこりを取り除く為に息を吹きかけ。この時、王妃は気づいていなかった、木箱に小さな穴が開いていることを。

 鏡の女王はその光を覗き込み。

「あれが王妃!? わらわが見た王妃ではない。いったいどいうことだ……? 何!? 100年経っている!? そうか、そう言うことか。わらわは100年間眠っていたのか……。そうだ、こいつを操ってやる」


 翌日。

 王妃に呼びだされた白雪姫。いきなり、あの森へ行ってはならないと言われ。厳しい表情の王妃を目の前にし。突然そんなことを言われ、困惑する白雪姫。訳を教えてと聞くと。

「あなたの喜ぶ顔など見たくない。私に笑顔をみせるな!」

 突然豹変した王妃。大好きな母親にあんなことを言われ、悲しみ、泣きながら部屋を飛び出した白雪姫。

 この日を境に白雪姫は、何がなんだかわからない困惑の渦の中で、王妃から奴隷のようにこきつかわれ、ボロボロ服を着せられ、王妃の部屋を掃除さられては、ほこりが1つでもあれば何度も掃除をさせられ。時には、ボロボロ服のままで、町に服を買いに行かされ、気に入った服が見つかるまで何度も買いに行かされた。


 白雪姫は王妃の仕打ちに耐えながら我慢をし、数日が過ぎ。王の留守をいいことに、やりたい放題の王妃。家来たちも見て見ぬ振り。こき使われる白雪姫。

 変わり果てた母親に白雪姫は、悲しくて、悲しくて、何度も、何度も、以前のお母さんに戻ってと叫んだ。

 しかし、その声は届かない、状況は何も変わらない。白雪姫はどんなことがあっても母親を信じている。3日後には王が帰って来る、それまでには。

 白雪姫は、母親が作ってくれたお気に入りのドレスを着て王妃の間に行くと、いきなり王妃に。

「その服を着るな! あなたの顔など見たくない、出て行きなさい!」

 鏡の女王は、白雪姫が心身ともボロボロになる姿を見て、鼻高々に笑っている。

 白雪姫は我慢の限界を超えていた、泣きなが部屋を飛び出し、城を出た。行き先はあそこしかない、小人の住む家。


 白雪姫は涙をこぼしながら走って、走って、走り疲れ、やっとのことで小人たちの家に着いたのは、夕方だった。

 小人たちは心配していた。毎日ように遊びに来ていた王妃が突然来なくなり、どうしたのかと。

 白雪姫は、小人たちの家のリビングで椅子に座り、コップ1杯の水を飲み。お城の出来事を全て話した。

 すると、冷静沈着で頭のいい小人が、その話を聞き。突然豹変した王妃の前日、変わったことがなかったか聞くと。

 白雪姫は、開かずの間のことを話し、王妃の間に新しい鏡があったことを話した。

 そこで、頭のいい小人は1つの仮説を立てた。封印した木箱、100年の節目、新しい鏡。もしかしたら、誰かが王妃を操っている、そう考えれば合点がいく。

 白雪姫はハッとした。確かにそれなら、合点がいく。では、どうやったそれを確かめるか、会議が始まった。白雪姫には心強い7人の小人たちがいる、いろんな知恵が出るはず。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る