第2の試練「白雪姫」(5)

 一方、ラビーはというと。アリスの思っていた通り捕まってはいない。

 ラビーはアリスと別れてから森の外れまで来ていた。3人の小人たちを簡単に振り切り、気配もなく、声も聞こえない。どうやら、ここまでは追ってこないらしい。

 ここは小高い丘になり、辺りを見渡すと町が見え。その町の奥には、山の中腹辺りにお城が見える。

 予想もしなかった小人たちの足の速さに、ラビーはアリスことが心配になり、LINEで連絡をとるが既読にならない。今も逃げ続けているのか、もしかしたら、そう思った時、AIアリスおばあちゃんから連絡が入り、アリスは小人たちに捕まったと言い。その捕まり方に2人は困惑している。

 しかし、アリスを助けに行かないと、そう思うラビーに対し、AIアリスおばあちゃんは違う。もしかしたら、わざと捕まったのではと言い出した。

 その時、それを裏付けるかのようにラビーのスマホに、アリスからメールが届き、メールを見ると。


 私は小人たちに捕まり、ケージに入れられたけど。どうやら、物語と同じで優しい小人たち。ラビーの足は、悔しいけど私よりちょっと速いから、捕まってはいないはず。このメールを読んだら、地図アプリでこの国のお城を探して見つかったらメールをください。ちなみに、助けに来なくても大丈夫です。心配ご無用、私に秘策あり。

 アリスからのメールには、そう書いてあり、更に困惑するラビーは、アリスに返信メールを送り。メールを受け取ったアリスはメールを見ると。


 もしかして、わざと捕まったの。意味不明のメールはやめてください。悔しいって何、張り合ってどうするの。心配ご無用って何。秘策って何。私たちとっては、意味不明なんですけど、説明はなしですか。お城は既に見つけています。何か作戦があるなら言ってください。


 そのメール見たアリスは、ぶつぶつ独り言を言い。

「いくら心配ご無用って書いても、大丈夫? とか、怪我してない? とか、普通書くでしょう!? まぁ、流石に仕事は速い。しかし、張り合ってどうするのって言われても、どうするの? そうだ、オリンピックにでるとか? まけちゃうよねー。なんか悔しいなー、なんで?」

 アリスは考え込んでいる。


 一方、ラビーを追いかけて行った残りの小人たち3人は、ラビーの足の速さに追いつけず、森のルールとして森の外れまでは行けず、諦めて木の家に戻って来るなり木の家の中に入らず庭に行き、そこにはガラスの棺に入れられた白雪姫が眠っていた。3人の小人たちは、ガラスの棺を覗き込み悲しみに暮れていると。

 そこへ4人の小人たちが駆けより、いきなりガラスの棺を開け、その様子を呆然と見ている3人の小人たち。

 すると、スマホを拾った小人は、肩落とし、小人たちを見て、首を横に振った。白雪姫の心臓の音は聞こえなかった。


 7人の小人たちにはリーダーがいない。皆個性あふれる優しき小人たち。しかし、今は悲しみの渦の中、白雪姫の命を奪った犯人を許さない、犯人は必ず捕まえる。そこで、リーダーに選ばれたのが頭のいい小人。

 4人の小人たちはアリスの言葉を信じた、それなのに裏切った。頭のいい小人は、冷静に分析を始め。しばらくして、7人の小人たちはアリスの元へ行き。頭のいい小人はアリスの目の前に立ち、何故あんなウソを言ったのか、アリスを問いただした。

 すると、アリスは肝心なことを言い忘れていた。しかし、冷静に対応するアリスは、あの毒リンゴは魔法によって作られ、白雪姫は仮死状態になっているだけで死んではいない。それに私は真犯人を知っている、と言った。


「真犯人だと!?」

 ざわつき始める、小人たち。アリスは次の手を打った。

「あのー、すみません。ところで、リスさんって、本当に私たちが毒リンゴを食べさせたところを見たんですか?」

「どうしてリスのことを……ちょっとまてよ……」

 その時、頭のいい小人は、ハッとし。

「私としたことが、肝心なそのことを確認していなかった」

 頭のいい小人は、そのことを確認してくると言い、家を飛び出して行き、しばらくして戻って来るなり。リスの証言を6人の小人たちに話し、アリスもその話を聞いていた。


 リスの証言によると。確かに、アリスとラビーが現場を逃げるように立ち去ったところをリスは見ている。しかし、白雪姫に毒リンゴをあげているところは見ていないと証言した。

 だからといって、アリスとラビーが犯人ではないとは言い切れない。もし犯人ではないというなら、何故、逃げるように立ち去ったのか。何故、私たちにすぐ知らせなかったのか。頭のいい小人は、アリスにその訳を聞いた。


 私たちが立ち去った訳はただ1つ。毒リンゴを食べさせた犯人を見て、一刻も早くその犯人を捕まえる為に立ち去った。小人さんたち知らせなかったのは、申し訳なかったけど、真犯人さえ捕まれば、白雪姫は魔法の眠りから目を覚ますはず。


 すると、7人の小人たちは、大きなテーブルを囲み会議を始めた。本当にアリスを信じていいのか。

 アリスの目を見ていると、どうやら嘘を言っているようには見えない。スマホを拾った小人が言う。しかし、頭のいい小人だけは、アリスを信じていいのか迷っている。

 しばらくして、結論が出た。頭のいい小人は、アリスを信じると言い。あとの小人たちもアリスを信じると言った。但し、アリスを信じる条件として、その真犯人をここに連れて来ること。そして、真犯人を連れて来るのはラビーとし、アリスはこの檻の中から出ることはできない。タイムリミットは1時間とする。


 もしかしたら、これは7人の小人たちの罠なのか。


 そんなことは一切考えないアリスは、この条件を吞み。アリスは、頭のいい小人にスマホを見せ。これと同じものをラビーも持っていて、このスマホに向かって喋ると、ラビーにその声が聞こえ、手紙も送れると説明した。

 すると、小人の1人が、そんなことができるのは魔法使いしかないと言い出し。他の小人たちもざわめき始め。

「静かに!」

 頭のいい小人が真剣な表情を見せ。アリスの目を見て。

「それを使って、ラビーに連絡をしなさい」

 あの頭のいい小人は、懐中時計を見て。

「今現在、午前10時50分。午前11時から午前12時までの1時間の間に、ここに真犯人を連れて来なさい。その時、あなたたち2人を捕まえるかどうかを判断する。但し、1時間以内に、仲間がここに現れなかったら、速やかにお城へつきだす。それでいいな?」


 アリスはそれに応じ、7人の小人たちに質問した。この国の王妃とはどういった人物なのか。

 その質問に7人の小人たち皆口を揃えて言う。国民を第一想い、王を慕い王助け、心優しい素晴らしい方だと。しかし、突然人が変わったかのように豹変し白雪姫にあんなひどい仕打ちをしたのか、信じられないと言った。

 その回答にアリスは、なるほどね、やはり私の思っていた通り。ルークさん、私の秘策を見てなさい。アリスはそう思い、ラビーにメールを送った。

 一方、ラビーはというと。小高い丘から、スペイン中北部を思わせる中世の街並みを見下ろし、景色を眺めながら、アリスのメールの返事を待っている。おそらく何かしら文句を言ってくるはずだと。

 そんな中、ラビーのスマホにメールが届き、メールを読み、困惑するラビー。

「えー!? 勝手に決めないでよねー。これを私が!? 無理無理無理、無理だって……。私にこれを演技しろって言うの……!?」

 思わず独り言を言うラビー。

 すると、スマホの画面に、小説の中のアリスが現れ。

「それ、面白そうじゃないの!?」

「はぁ!? 面白いって、他人事だとおもって……」

「ごめんごめん……。でも、もしアリスの言うことが本当なら、これはラビーにしかできないことよ」

「私にしかできない!?」

「あんな経験をしたラビーだから、そうでしょ?」

「そうだね、分かった。なんかあったら助けてよ!?」

「へぇー、珍しいね、ラビーが弱腰になるなんて、大丈夫だって、私たちがいるじゃないの……!? 行くわよ! 時間内から、城まで2分で行ける?」

「ありがとね、アリスお姉ちゃん……。2分ね、まかしといって」


 ラビーは走り出し、あっという間に町に入り、あっという間にお城の近くに到着。時間は1分50秒。小説の中のアリスは、まあまあね、と言っていた。


 タイムリミットまで、あと、57分。

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