第2の試練「白雪姫」(3)

 一方、アリスの父親は朝食をすませ、タイムマシンのことが気になり早々と研究所に行き。朝食の時間になっても2階から降りて来ないアリスとラビーを起こしに、アリスの母親は、アリスの部屋に行くと、2人の姿がない。もしかしたらと研究所に行と、2人は来ていない。この時既に、AIアリスおばあちゃんは、闇の女王が造りだした特殊魔法空間に気づき、その中にアリスとラビーが閉じ込められたことを知っていた。


 突然、闇の女王に寝返り、兄と慕うラビーを裏切ったルーク。突然の裏切りに腹を立て、ラビーを裏切ったことが1番悔しく悲しい想いのアリス。しかし、ラビーはルークに何も言い返さなかった。1番辛い想いをしているはずなのに。

 この時、ラビーはアリスに背を向け、何故かスマホを見ている。その様子は、ルークに対し、腹を立ててもいない、泣いてもいない、悲しんでもいない。


「えっ!? 私たちを助けに来たんじゃないの!?」

 困惑するラビー。携帯電話の相手は、小説の中のアリス。

「だって、このまま私だけ隠れているのは、どうしてもできなかったの!」

「だからって、このままじゃ、お姉ちゃんも石になるんだよ!」

「私が石に!? それは不可能。私を石にすることはできない。だって私、フィールドの外だから。それに、タイムマシンの中にいるし、不可能なの」

 更に、困惑するラビー。小説の中のアリスはタイムマシンの中にいる。いったいこれはどういうことなのか。ラビーはわかりやすく説明してと、小説の中のアリスに言うと。


 あのノートからこの世界に足を踏み入れた1番目は、小説の中のアリスだった。

 小説の中のアリスは、ひょんなことから異世界に来た。異世界に来て若返り、特殊能力を身につけ、3ヶ月経ち、天の声から決断を迫られた。異世界に残るか、元の世界に戻りたいのか。突然決断を迫られ、困惑する小説の中のアリス。

 その時、突然眩しい光を放つドアが現れ。そのドアに吸い込まれるかのように小説の中のアリスはドアを開けた。

 すると、小説の中のアリスは、この世界に足を踏み入れ。床に落ちていたノートに気づき、ページをめくると呆然とし、この小説から出て来たことを知り。そして、ベッドに寝ているアリスを見て、すぐにわかった、自分の生みの親はアリスだと。

 その時突然、小説の中のアリスは、頭の中が真っ白になり、アリスの頭の中に入り込んでいた。


 今思えば、もしかしたら、完結していない小説の戻るべき場所は、アリス自身なのかもしれない。私は、アリスの頭の中からこの子を見ていた。

 そして、アリスたちが未来からこの時代に戻ってきた後、記憶が全て戻り。闇の女王の気配を感じ。ここから抜け出すことができた。


 実は、未来からアリスたちが戻って来てすぐに、アリスが母親を呼びに行った時、闇の女王はアリスの頭の中から抜け出し。小説の中のアリスもその後抜け出し、瞬間移動でタイムマシンに身を潜めていた。その時、タイムマシンの中は暗転し、室内灯が点き。アリスたちには、タイムマシンの中にいる小説の中のアリスには気づかなかった。

 小説の中のアリスがタイムマシンに隠れていることを知っているのは、アリスの両親とAIアリスおばあちゃん。本当だったら、今日そのことをアリスとラビーに話す予定だった。


 ラビーは、小説の中のアリスがタイムマシンの中にいた訳を知り。小説の中のアリスは、これからの話すことは全てオープンで話すと言いうが。もう既にこの会話は闇の女王に筒抜け。もしかしたら、これは、小説の中のアリスの策なのか。

 そんな中、ラビーは気になることが。どうやって私たちのポケットの中にスマホ入れたのか聞くと。小説の中のアリスの特殊能力、正義のリングを使いポケットにスマホを転送した言い。だったらその逆、正義のリングを使って、このフィールドから抜け出せないの、と聞くと。小説の中のアリスは、ラビーにあきれたかのように。

「はぁ!? あなた、ここから抜け出してどうするの? まさか、あいつをこっちの世界に誘い込む気なの? あいつがこっちのフィールドに来るはずがないでしょう。それより、肝心なノートを取り戻さないでどうするの!?」

「確かにそうだけど、ちょっと待って、ルークはどうでもいいわけ? まさか、お姉ちゃん、ルークが裏切ったと思っているんじゃないでしょうね?」

「はぁ!? そんなこと思うわけないでしょ!」

「だって……ごめんなさい」


 その会話をラビーの背中越しに聞いてアリスは、その場に立ち尽くし何も言えなかった。私はあの時約束した、どんなことがあってもラビーを信じると。アリスは複雑気持ちの中、ごめんなさいと呟いた。


 この時、タイムマシンの中にいるAIアリスおばあちゃんは、この状況を打開する方法を考えていた。

 タイムマシンで過去に戻ることはできない。アリスの記憶が消されている。例え、過去に戻り、7歳のアリスに小説を完結しろと言っても、完結できるとは思えない。このままでは、あのノートは時期に崩壊する。ノートに関わった人間は全て消える。今、あのノートがどんな状態になっているのか。崩壊へと向い、残された時間はどのくらいあるのか。

 幸いというか、小説の中のアリスを誘き出すこの仕掛け。窓の外から家の中を覗くと、アリスたちの様子が見える。アリスたちを助けたければここに来るがいいと言っているかのよう。まるで台所の床の片隅に置いてある、あの害虫を捕まえるやつと同じ、一度入ったら二度と出られない。玄関ドアを開ければ罠にはまる。ただ、両親が玄関ドアを開けると、元のリビング。

 驚きだったのは、小説の中のアリスの突然の行動。この時、思わぬ収穫もあった。こちら側から小説の中のアリスの正義のリングが使えた。しかし、アリスたちを正義のリングで救うことはできなかった。やはりあのフィールドは強力。しかし、こちらには私の両親と予測のつかない行動をする、小説の中のアリスがいる。三人寄れば文殊の知恵。何かいい打開策がきっとみつかるはず。今は時間を稼いで何か打開策を考えないと。

 そこで、AIアリスおばあちゃんはアリスとラビーに、メールでこちらの状況知らせ、残りの試練を全てクリアするように頼み。AIアリスおばあちゃんは、お互いの呼び名を決めることにした。ここには、アリスが3人いる。


 アリスは、そのまま「アリス」、小説の中のアリスは、「アリスお姉ちゃん」、AIアリスおばあちゃんは、「おばあちゃん」、但し、ラビーはアリスのことを「お姉ちゃん」と呼ぶ。そして、ここのリーダーは一応、AIアリスおばあちゃんに決定。理由、おばあちゃんだから。

 

 この会話を聞かれているはずなのに、何も言ってこない闇の女王は、大きな魔法の鏡を見ている。まさかを嫌いトラウマになり、かなり用心深くなっているが、ああいうこともある。どうやら、アリスたちにうかつに手が出せないようだ。

 そんな中、闇の女王に会話が聞かれていようがそんなことは気にしないの、と言うAIアリスおばあちゃん。しかし、こちらにはスマホがる。聞かれたくないことは、LINEを使えばいいと言う、ラビー。確かに、闇の女王は機械音痴、LINEなんて知らないはず。


 このままこの2人、何の打開策もなく、石になる運命なのか。それよりも消えてなくなるのか。とにかく第2の試練をクリアすることに集中する、アリスとラビー。

 私たちには心強い味方がいる、なんとしてでもノートを取戻し、お姉ちゃんの消された記憶を取り戻す、そう思うラビー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る