ラビーの過去

ラビーの過去(1)

 ラビーはいったい何者なのか。ラビーは下を向き、何か考えている様子。

「ラビー、あなたっていったい何者なの?」

「……」

「私は、あなたが誰であろうと、私の大事な妹だからね」

 その言葉にラビーは目頭が熱くなり、記憶を取り戻しているが、まだ思い出せない記憶がある。それが思い出せない以上、私が何者なのかは話せない。

「お姉ちゃん、嬉しい。でも、もう少し待って、ちゃんと話すから」

「わかった」


 さて、これからどうするか。あのティラノサウルスは、たぶんお昼寝中。アリスは、スマホの恐竜アプリを実行。

 すると、ここからまた北へ1キ先にあいつがいる。また、ジャングルを通らなければならない。先頭はラビーに変わり、2人は歩き始めた。


 2人はしばらくと、ジャングル手前に来た。ラビーは一旦立ち止まり、手のひらを広げ、右手を突き出した。

 すると、目の前のその先までもが、草や木が斜めに倒れ道ができ、その光景に驚くアリス。

 この道は、2人が通すぎると元に戻って行く。むやみに生き物を傷つけたりはしない。これなら、普通に歩ける。アリスは、流石私の妹、すごいねと感心していた。

 歩いていると、300メートルくらい歩いたところで、何か聞こえる。どうやら、ここから100メートル先、大きな川が流れている様子。でも、大丈夫。川も真っ二つに割れ、道が出来ている。

 ラビーの目は3キロ先まで見え、耳は500メートル先のひそひそ話しも聞こえ、聞き分けることができる。


 その時、ラビーが気づいた、見てはいけないもの。

「キャー! 出た、蛇!」

 その叫び声に驚いたアリスは、一目散に逃げ出した。


 アリスは4歳頃、広い庭で遊んでいた。蛇は見たことがなく、足もとににょろにょろと現れ。見たら、蛇の顔と舌に、鳥肌が立ち。その時、突然足をかまれ、その記憶がトラウマに。


 アリスは走り続け。川の真ん中で我に返り。ラビーを置きざりにしていたことに気づき、後ろを振り返り、元来た道を急いで戻ろうとした時だった。

 突然道が無くなり、川の水が押し寄せ、逃げられない。あっという間に川に飲み込まれ、流れが速い。それにアリスは泳げない、いや、泳いだことがない。


 天罰だ、ラビーを置きざりにした。自分の命よりも大事な妹なのに、必ず守ると言ったのに、私は、逃げた。そのことにラビーが怒ったんだと、川に流されるアリスは思い。


 しかし、ラビーは怒ってなどいない。

 草木を斜めに倒し道をつくり、恐竜2頭を吹き飛ばすこの技。気功を極限に高め、それを自由自在に操られる、気功波・気功術。

 ラビーの記憶が90%戻ったが、久しぶりに繰り出した技。気の安定性が不十分だった。そのうえ、蛇を見た。気のみだれが生じ、技が弱まり、そのせいで道がなくなった。


 ラビーもアリスと似たような境遇にあい、蛇は大嫌い。この時、ラビーは固まり動けなかった。気の乱れに気づいたが、すでに遅し。

 ラビーはアリスを助けるために、もの凄い勢いで走りだし。あっという間に川岸までくるとアリスが見え。しかし、その先には川がない、滝だ。間に合いそうもない。その瞬間、アリス姿が消えた。

 アリスは気を失ってい、滝底へ真っ逆さまな落ちて行く。300メートルくらいの落差がある滝、かなりのスピードで滝底へ落ちていくアリス。

 その時、ラビーの記憶が全て戻り、あの技を使う、応用が利くはず、正義の名のもとに。


 ラビーは、立ったまま体が浮き、川の中央に行き、浮いてまま、手のひらを広げ、右手を突き出した。

「行けー! 正義のリング! お姉ちゃんを助けてー!」

 その叫び声と、手のひらから光の輪が作られ、まるで意思を持っているかのように光速でアリスの元へ、滝底まであと5メートル。

 すると、光の輪がアリスを包み込み、透明な球体になにり、水面すれすれでその場に静止している。透明な球体の中にいるアリスは気を失ったまま。

 その時、天から声が聞こえ。

「お姉ちゃん、お姉ちゃん、聞こえる!? 大丈夫!?」

 その声に気づいたアリスは、ゆっくりと目を開け、起き上がり。川で溺れたのになんともない様子。それに、服が濡れていない。

「えっ!? ここ何処? 天国!? いや、それはないか。だって、ラビーを置き去りに……」

 急に泣き出しアリス。ごめんなさい、ごめんなさいと泣き崩れ。


 すると、アリスの目の前にラビーの幻影が現れ。ラビーは初めて見た、アリスがあんなに泣くところ。

「そうよ、そうよ。何で私を置き去りするかなー、ってね。はい、泣くのは止めー……。止めてって言ってるでしょう!?」

 それに気づいたアリス、その幻影を見て。

「ごめんなさい。本当にごめんなさい。怒ってるよね!? 怒ってるよね!?」

「……怒ってません」

「何その間!? やっぱり、怒ってる」

「怒ってませんって言ってるでしょう! 私が怒っているのは、何で、スマホの緊急ボタンを押さなかったの? 押せば、タイムマシンが助けにくるでしょう!?」

 確かに、ラビーの言う通り。


「だって、天罰だって……」

「はぁ!? 天罰!? ふざけないでよね!? たったあんだけのことで、私が大事なお姉ちゃんをひどい目に合わすと思う!? そんなことするわけないでしょう!?」

 確かに、ラビーの言う通り。


 何も言えないアリスだが。

「たったあんだけ!? たったあんだけって何よ! ラビーだって、蛇嫌いでしょう!?」

「確かにそうだけど。だから、あれは言葉のあやであって、確かにあの動き、あの顔は……」

「そうでしょう!? だよねー、あの動き。それに、何もしてないのに急に飛びかかってくるし」

「それ、わかるわかる。だよねー。何で、あの動きしかできないのかね!?」

「蛇だからじゃないの!?」

「そっか、そうだよねー。だって、あの動きだから蛇なんだよねー」


 この2人、訳の分からない話をしている。


 すると、辺りをキョロキョロするアリス。

「ところでここ何処? もしかして、やっぱり……」 

「お姉ちゃん、ほっぺたをつねってみて!?」

 言われるがまま頬をつねるアリス。

「痛い! えっ!? 私、生きてる」

「当たり前でしょう。何言ってるの!?」


 アリスは、ラビーが助けてくれたことを知り、礼を言い、ラビーは凄いねと言った。

 ラビーは、もし私がお姉ちゃんの立場だったら、同じことをしていた、これでお相子ねと言うと。

 それは違うと反論するアリス。私はどんなことがあっても、ラビーを見捨てたりはしない。いや、妹を見捨てない。こんな過ちは二度と起こさないと誓うアリス。

 もちろんラビーもアリスと同じ気持ち。ただあれは、言葉のあやであって、お姉ちゃんを見捨てるはずがないとラビーは言った。


 トラウマは怖いが、なんかわかんないけど絆が深まった。

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