アリスと新しい生活(2)
アリスの母親は、アリスが決めたことだから仕方がないと納得し。あの集合写真を見ながら紅茶を飲んでいた。
アリスの12歳の誕生日なのに、母親が浮かない表情に訳がある。アリスが生まれる前に遡る。この小高い丘に、あの真っ白な家が建った時のことだった。
母親の名は、アイリス。父親の名は、ウォルター、職業は科学者。
念願の広い土地を買い、家が10軒ほど建つ広さ。ここには小さな森あり。この場所を選んだのはアイリス。その理由は、生まれて来る子供一緒に花を育て、自然の中で暮らすこと。
ウォルターもここが気に入り。都会を離れ、自然の中で研究したいと。自宅の隣に、今の家と同じくらいの広さに研究所を造り、1人で研究をしていた。
ウォルターは、車、家電、電話、ラジオ、テレビなど、その基本になる物を研究し、そのアイディアを売ったり。自ら開発し、製品なったものもある。このことで、発想の天才、発明王と呼ばれ、世界に名を知らしめ。何かを生み出す、その研究の面白さに没頭していた。
そんな中、アリスが生まれ、両親は喜んだ。しかし、アイリスはウォルターの胸の内を知ってしまった。「アリスが、男の子だったら」
どうやら、親子で研究をやることを夢描いていた。だからと言って、アリスの面倒を見ない訳ではないのだが。やはり、そのことが尾を引き、研究所にこもることが多くなり。アイリスはそのことについて、文句は言わなかった。
アリスはすくすくと育ち。元気いっぱいの女の子、明るくて、優しい女の子。母親の後を歩き。花を育てり、掃除の手伝い、大きな庭の手入れ手伝ったり。母親と同じ空気を感じていた。
アリスが7歳になり、読み書きが出来るようになると、こんなことを母親に聞いていた。
「私の名前って、何で、アリスなの?」
すると、母親は2階の部屋から、1冊の本を持ってきた。
差し出す本を手にするアリスは、タイトルを見て驚いている。
私と同じ名前、『不思議の国のアリス』
母親の趣味は読書ということもあり、以前からこの本が大好きで、女の子が生まれたら、名前はアリスと決めていた。
この時アリスは、母親が小説家を目指していた時期もあったことを知り。大好きなお母さんの好きな物をまた1つ知り、その本を読んでみると。小説の素晴らしさを知り、母親の部屋にある本を全部あっという間に読み、本が大好きになり。近所の子供たちと本を交換して読んだり、庭で物語ごっこをしたり、楽しく過ごしていた。
この頃から、アリスは小説家になりたいと夢を持ち。母親はアリスに、1冊のノートを渡し。そのノートにアリスは小説を書き始めた。
母親は、我が子が自分の叶わなかった夢を引きついでくれると喜んだ。しかし、ウォルターことが気がりだった。
ある日。
アリスは、小説の全体の3分2まで書き終え。残り3分1を残し、浮かない表情をしている。
机の1番下の引き出しに、未完成の小説のノートをしまいこんだまま、ペンが握れずにいた。椅子に座り、窓の外を見ている。
小説を書くのは楽しい、ただそれだけだった。しかし、なんのために小説を書くのか。
自分が楽しいから、好きだから、疑問になり、自分に問いかけていると。ふと本棚にある、あの本を見た瞬間、たくさんの人に自分の書いた小説を読んでもらいたいと思うようになり。
あの本のように、たくさんの人に読まれる小説を自分も書いているのか。もし誰1人読んでもらえかったらどうしょう、不安に襲われ、不安になると、そのことばかり考える。
小説を完成させようと机に向かっても、あの不安に悩まされ、続きが書けない、ペンが握れない。
最近は、友達と遊んでばかりのアリス。母親はアリスが悩んでいることを知らずいた。
そんなある日。
母親は小説の進み具合が気になり。アリスの部屋に行き、進み具合を聞くと。
アリスは、あの不安のことを話し。突然、こんな思いをするなら小説を書くのをやめると言い出した。
母親は、誰1人読んでいないのに結論を急ぐなと言い、母親は思った。
アリスは、ただ結果を恐れ、傷つきたくないだけだと。その想いが勝ち、あんなことを言ったのだと。本当は小説を書きたいに決まっている。
小説のアィデアを考えたり、小説を書いているアリスはとても楽しそう。母親の目にはそう映っていた。しかし、これ以上なにも言えない、アリスに夢を諦めるなと言えない。そう、自分のことは棚に上げてまで。
アイリスは小説家になることを夢みていた。小説を書き、出版社に何度も足を運び、「これでは駄目だ」と言われ続け、小説家になる夢を諦めた。
この時、ウォルターに出会い、夢を追う情熱の凄さに圧倒され、見せられた。いつしか、ウォルターの夢が自分の夢となっていた。
アリスはどうしょうもない想いに、泣きながら部屋を飛び出し行き。母親は声を大にして、「アリス!」と叫んだが、追いかけて行けず。ここは、そっとしとこうと。まだ7歳なのに、まるで大人のように感じていた。
ふと母親は机の上の1冊のノートを目にした。いけないと思うがやはり気になり、ノートを手にすると。ほとばしる情熱を感じ。気が付けば、未完成の小説を読んでいた。
母親がアリスの書いた小説を夢中になって読んでる頃、アリスは以外な所にいた。
滅多に立ち入らない場所。そう、たった1人で研究を続けている父親の研究所の中でアリスは立ちすくみ。自分は何故ここに居るのか。食事のとき以外は、いつも研究所いる父親。余り口をきかない。遊んでもくれない。どうしてそんなに研究を続けられるのか。今、疑問に思うアリス。
今ここで、アリスは思ってもみないことを聞く。
アリスの目線の先には父親がいる。椅子に座り、肩を落とし、寂しそうな横顔。今まで見たことがない光景を目にしているアリス。
すると、父親が溜息を1つ。
「なんで、アリスは女の子なんだ!? 何故、男の子じゃないんだ!」
父親は、下を向き、叫んだ。
アリスはその叫び声に驚き、思わず後ろに1歩下がり。何かに足が当たり、物音が響き渡り、バケツが転がっている。その音に反応した父親は立ち上がり。アリスに気づいた。
「アリス、そこで何をしている!?」
アリスはゆっくりと父親の所へ歩き、父親の目の前に来た。
「お父さん。さっき、なって言った!? なんで私が女の子じゃダメなの!? ちゃんと説明してよ!」
そんなアリスを見て父親は驚いている。さっきの独り言を聞かれていた。そして、アリスがこんな表情をするなんて初めて見た。まるで、大人になった娘を見ているそんな感じだった。
「アリス、そこに座りなさい」
アリスは無言で椅子に座り。父親も椅子に座り。向き合う2人。
父親はアリスに、今迄一度も自分がどんな研究をしているのか、話したことがない。そこで、その話をすることにした。
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