アリスと新しい生活

アリスと新しい生活(1)

 ここはアメリカ。とある州の小高い丘の上に、1軒の家が建っていた。2階建ての真っ白な家。庭もあり、花壇には花も咲いている。

 朝日が昇り、2階建ての真っ白い壁がオレンジ色に染まり。窓には白いカーテン。カーテンの隙間からこぼれる木漏れ日。

 2階で寝ている、アリスの部屋には小鳥のさえずりが聞こえ。ベッドに潜り込み、顔を出さずにいた。


 季節は春なのに、まだ寒いのか。いや、違う。既に起きているが、何か独り言を。

「あれ!? 今日、何の日だっけ……!? あっ! 私、今日誕生日だった。今何時!? あっ、そうだ! お父さんの仕事手伝う約束だった」


 ベッドから飛び起き、机の上の時計を見ると午前9時。父親との約束の時間は午前8時30分。

 アリスは急いで父親の働いている研究所に行きたい。しかし、部屋中の何処を探しても肝心の研究用白衣が見つからない。焦るアリス。

 すると、突然母親がアリスの部屋に入って来た。

「アリス、何やってるの!? ノックして返事がないと思ったら、こんなにちらかして……」

「あっ! お母さん、私の研究用白衣が見つからないの!? お母さん知らない?」

 アリス振り返ると。母親の手には、研究用白衣が。

「あっ、それ! どこにあったの?」

「どこにあったの、じゃないの! 寝る前に準備しておきなさいって言ったでしょう!?」

「……ごめんなさい……」


 アリスは、12歳の誕生日を迎えた朝から叱られた。


 昨日、夕食の後。父親から渡されていた研究用白衣。

 やっと本格的に、父親と一緒に研究ができる。その喜びで、1階にあるソファーに座り、研究用白衣を眺めていた。しかし、急に眠たくなり、そり場に眠り。1時間が経ち、目が覚めると、目をこすりながら自分の部屋へ戻った。この時、研究用白衣ソファーの下に。研究用白衣を手に持ったまま寝た為、床に落ちていた。


「わかったのならいいの……。お父さんには少し遅れるからって、言っておいたから」

「お父さん、怒ってなかった?」

「怒るどころか、朝からご機嫌で、まるで子供のようにはしゃいでたわよ! 娘と一緒に研究ができるって」

 アリスはホッとしている。

 しかし、母親は浮かない表情。

「アリス、本当にこれでいいの?」

「また、その話!? もう、決めたことだから、これでいいの!」

「わかった。この話はもうしないから。あっ、それと、お父さんを悲しませることはしないでよ」

「わかってる」

「お母さん、下に行くから、ここ、ちゃんと片付けてから降りてくるのよ」

「はーい!」

「あっ、忘れるところだった。アリス、誕生日おめでとう。ケーキ作っておくから、夕食にお祝いね」

 首を縦に振り、「お母さん、ありがとうと」

 母親は1階に下りて行った。


 ここアリスの部屋は、真っ白壁に、12畳くらいの広さ。クローゼット。難しい本がいっぱい並ぶ本棚。東側にある窓の近くには机。その隣にはベッド。12歳の女の子の部屋とは思えない部屋。

 アリスは部屋を片付け、着替えが終わり、1階へ下りて行った。


 アリスは1人っ子で、両親と3人暮らし。ここは、まるで大豪邸のお嬢様がでてきそうな感じ。大きなキッチンにダイニングテーブル。暖炉、大きなソファー。床は大理石。天井は高く、キラキラ輝くシャンデリア。部屋数は、1階が3部屋。2階は4部屋。各階にバス、トイレ付。


 ダイニングテーブルの上には、朝食が用意されていた。

 アリスは、トースト1枚に目玉焼きとハム2枚をのせて半分に折り、急いで食べている。のどに詰まりそうになると、コップに注いである牛乳を飲み。食べ終わると、食器をキッチンのところへ待って行き。母親に行ってきますと、元気よく父親のいる研究所へ向かった。


 母親は、洗い物に洗濯、掃除をすませると、1階のソファーに座り、目の前にあるテーブルには紅茶が置いてある。その隣には写真立て、モノクロームの写真に写っている家族の集合写真。

 アリスが8歳の時、父親が記念にと自ら作ったカメラで撮った写真を見ながら母親は紅茶を一口飲み。ため息を一つつき、あの出来事さえなかったらアリスは、小さな森のあるこの場所で元気いっぱいに遊び。緑の芝生に覆われたこの庭で、たくさんの花たちに囲まれ、毎日のように友達を連れてブランコに乗ったりして遊んでいたはず。今は、何も残っていない。友達もいなくなった。

 母親は、集合写真を撮るきっかけになった前日の出来事を思い出していた。

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