世界共通語会議
rita
第1話
「お集まりの皆さま、長らくお待たせいたしました。ここに、世界共通語会議、第三回の開催を宣言いたします」
ギリシャ、アテネはパルテノン神殿にほど近いメトロポリスホテル。王宮の広間を思わせる総大理石張りの“賢人の間”に、独特の低く押し殺したような声が響きわたった。ミケランジェロのダビデ風に整った面立ちの司会者は、ライオンの鬣を思わせる長い髪に銀縁眼鏡のタキシード姿の老紳士である。その襟にはやはり、青い背景に白い十字とそれを囲む2匹の獅子のエンブレムが縫い付けられ、背後のスクリーンには、かのラファエロの最高傑作、“アテナイの学堂”が映し出され、演説台のほかは何もない殺風景な壇上に花を添えていた。(これは世界共通語会議理事会員のお歴々が、言葉は万物の流転のあいだに存する、調和・統一ある理性法則であると説いた、“ヘラクレイトス”を、会議のイメージキャラクターとせんがために意図して飾っておいたものだったが、当の主人公は、ラファエロの間の石段の下で石工風の身なりをして一人淋しく頬杖をついている有様で、いずれにしても集まった人々の関心は、はるか悠久の昔の哲人にではなく、壇上のギリシャ人に向けられていたので、古参人たちの思惑は見事にはずれたというわけだった)
ホール中央のラウンドデスクに居並ぶのは、肌の色も目や髪の色もばらばら、文字通り国際色豊かな面々である。全身を黒のローブで覆って目だけをぎらつかせている人、色鮮やかなダシキスーツに身を包んだ、今まさに生まれ出てきたというような輝くばかりの肌をした人、更紗模様の巻きスカート姿の妙齢の女性もいれば、炎のように高々と巻き上げた髪と胸中いっぱいにサンゴを巻きつけた、さながら竜宮城の乙姫様と言った風情の熟女もいる。身に付ける衣装もさまざまなら、職業も多種多様。宗教家、言語学者、大学教授、作家、評論家、タレント。人々は皆、借りてきた猫のようにとりすまして話に聞き入っている。
「はじめに、昨年、第二回の課題ワード”あなた”にかわる世界共通語には、“オノレ”が、第一回世界共通語会議の、“わたし”には、“ワレ”が選ばれましたことをご報告申し上げます。そして、第三回世界共通語会議(W•C•L•C)、今年度の課題単語は、“愛”です」
司会者がそこまで話し終えた時、ホールの二階席は、格闘場かアカデミー授賞式発表会場かと見まごうほどの騒ぎに包まれた。
“ヒューピーヒューピーヒューヒューピーピー”
それもそのはず、オペラハウスで言うところのバルコニ―席には、各国の応援団が、我が祖国の言語が栄えある世界共通語に選ばれる瞬間を一目見ようとぎっしりと詰めかけていたのである。
「二階席の皆さま、どうかご静粛に願います」
三度目の警告でやっと騒ぎは収まると、司会者はほっとしたように空咳を一つついた。それからその達磨のような大きな目をぎょろりと向いて続けた。
「周知のように愛は、英語ではlove、フランス語で“amour(アムール)”、ドイツでは“liebe(リーベ)”中国では“愛(ふぁい)”アラビア語で“hubu(フッブ)n”、 スワヒリ語では”upendo(ウペンド)”そして我が母国ギリシャでは、”eros(エロス)”、”philia(フィリア)、”storge(ストルゲ)”さらには“agape(アガペ)”と実に四つの概念から成り立つ言葉であります。念のために申し上げますと、”eros(エロス)”はその名も恋する者への愛、philia(フィリア)は友人への愛、さらに”storge(ストルゲ)”は家族愛、”agape(アガペ)”は、おおむね、神の無限なる愛、すなわち無償の愛と、かように分類されるのです。ひるがえって世界には二百超の国家と八百の民族が存し、その言語は、千数百語とも数千語とも数えられます。世界共通語会議ではこの言語の壁を取り払うために創建されました。目的は、世界中の人々が手と手を取り合う平和な世界の構築です。すなわち我々は、世界共通語会議こそが、人類平和を遂行できる唯一無二の団体であると固く信じているのです。前置きが長くなりました。それではいよいよ最初の評決へと移りたいと思います。用意はいいですか。今から順に三つの単語を読み上げます。この中からもっとも”愛”の世界共通語にふさわしいと思われるものを一つ選んで、お手元のボタンでお知らせください。まずは第一候補から “ミル”」
それと同時に壇上のスクリーンに、”アテナイの学堂”に代わって、第一番目の候補“ミル”の文字が映し出された。応援団席がまたもやどよめきに包まれた。立ち上がって歓声を上げる者、握手を交わし合う者、うちひしがれたように落胆のため息をつく者。今や応援団席の風景は会議の風物詩となっていた。とりわけ昨年、第二回世界共通語会議の様子がニュースに取り上げられ、人々の悲喜こもごもとした様子が全世界に流れてからは、会議の開催ばかりか応援団にも関心が向けられ、志願する人の数が増えた昨年からは、オーディションで選ばれた人々が応援団を構成するようになったのだった。楽器、ダンス、歌など芸能分野のプロ集団だが、人々の務めは最高のパフォーマンスを披露することであったし、皆、口にこそ出さないが、ことさらのオーバーアクションはテレビ映りを考えてのものなのだった。
そもそも世界共通語会議は、グローバル化の促進により、一部の言語圏のみが恩恵に浴するようになったことに、危機感を覚えた人々によって立ち上げられた。各国首脳人や政財界人、言語学者に知識人などが主な発起人であるが、その精神は、アフリカ、中東、アジア、ひいては南方の島国まで拡散し、第三回目の会議には、国や民族合わせて51ヵ国の参加を得ていた。もともと何人も言語によって不利益をこうむらないという壮大な理念によって生まれた団体であるが、この”三つの単語”の発表までには、膨大な時間を要した。というのも、世界共通語たるからには、世界中の言語から選び出したものでなければならない。選定方法は公平かつ公正なものでなければならないと、厳しく取り決められていたからである。現在、190国の有する言語は6900語であるが、世界には70億人の人々がいて、仮にすべての人々が母国語でない単語をエントリーするとすれば、70億個の単語の中から、たった三つだけを選び出さねばならない勘定となる。その上、選定に当たっては多数決で選ぶというルールが取り決められてあったものだから、記念すべき第一回目の作業は困難を極めた。第一回世界共通語の課題単語は、”一人称単数”、”わたし”であったが、集まった単語は、一人につき一単語という制限をもうけなかったたせいもあるのだろうが、当初の予想をはるかに超える800億語であった。それでもなんとかルールに従って、三つの単語を選定されたわけだが、これには実際途方もない時間が費やされた。原因の一つは、パソコンソフトを使い、手入力によって順位をはかるという旧式の方法をとったためだった。世界共通語会議の統計課の人々が寝る間も惜しんで集計に当たった結果、会議の開催にはなんとか間に合ったが、もはや毎年このような作業を継続していくことは不可能に思われた。何かよい方法はないものか、理事会をはじめとする会議の関係者が思案にくれていた頃に、その救世主は現れた。P国の電子機器メーカーが開発していた自動言語判定機である。この機械の何が素晴らしいといって、人工知能のコネクショニズムの知能体に類似しているということであった。コネクショ二ズムにおいての原理は"経験"させると機械が勝手に学習してくれるという点だった。要するに自動言語判定機自らが、ある人と同じ経験をすることで、その人と全く同じ思考と趣向を身に付けるというものである。たとえば、“世界共通語”の“わたし”という単語を、ある人がどのような言辞に置き換えるか、その人が体験した様々な情報を取り込むことで、機械が勝手に判断できるようになるのである。方法はこう。まず二つのデバイスを用意する。一つは視覚から入ってきた情報を文字化する眼鏡、もう一つは録音装置のついたイヤホン。これらを人の身体に装着し、各人が見たり聞いたりしたものをデータとして取り込み、そこにさらに様々な言辞に対して脳がどのように反応したか、脳波のグラフを重ねる。そこから単語に対する好悪をはかり、該当の単語を導き出すという仕組みである。被験者は、テレビの視聴率の測定の要領で、各国から無作為に選ばれた人々である。彼らにはスマートフォン、さらには眼鏡とイヤホン、そして外出時の脳波測定のための帽子がそれぞれ配られた。取り込まれたすべてのデータは、スマートフォンで処理後、自動言語判定機に送信、機械はすべての情報から名詞のみを語彙として記憶セクションに保存、さらに問題の言葉を入力すると、各々の人々がもっとも好む言辞が割り出されるというわけである。この機械の開発によって、言辞の収集時間と選定までの時間は大幅に縮小され、第三回世界共通語会議の課題ワード“愛”においては、わずか12時間ほどで三単語を絞り込むことに成功した。
「それでは次に、第二番目の単語の発表にかかります。”コロ”」
同時にスクリーン上に“コロ”と大写しになると、例によってホール中に歓声ともため息ともつかないどよめきが広がった。ことにバルコニー席中央に陣取っていたソンブレロにカラフルなシャツ姿の喜びようは尋常ではなかった。ギターをジャンジャンかき鳴らし、応援団のリーダーらしき、刺しゅう入りのグアヤベラシャツをかっちり着こんだサイのように太った中年男などは、トランペットをプカプカ吹きならす始末だった。
「ご静粛に、ご静粛に」
司会者がドスのきいた低音で注意を促したが、いっこうに騒ぎは収まらない。こうなればもうお手上げ状態、ギリシャの伊達男はそのうちに呆れたような苦笑いを浮かべ、やがて司会者は、それでもなんとか石のように固く取り澄ました表情を繕いながら三番目の候補を発表にかかった。
「それでは、最後に三番目の候補の発表にまいります。“ドゥルアルテドラケス”」
これに湧いたのが観客席の端っこに陣取っていた軍団である。背丈がゆうに180センチを超える女性ばかりのチームで、両方のほっぺたに国旗をペイントし、白とオレンジのジャージ服に包んだグラマラスな肉体は、おのずと男性の注視にさらされたが、それゆえに女性参加者からは不評を買った。
――どこかの大統領じゃあるまいし、そんな言いにくいことを毎日、たくの主人に向かって言わなければならないなんて、わたくし、まっぴらですわーー
――ほんとにそうですわ。そもそも世界共通語たるもの、大人から子どもから入れ歯のはまったお年寄りまで、誰もが簡単に発音ができて、覚えやすいというのが、その意義なんですものねぇ。そんな舌のかみそうな長ったらしい言葉で、誰が愛をささやけるもんですかーー
――まあ、そう決めつけるもんでもありませんよ。“わたし”はもう第一回目で“ワレ”と決まったんですからな。ワレ ドゥルアルテドラケスなんてなんだか誓い言葉みたいで、なかなかいいじゃありませんかーー
――そんなことおっしゃって、貴方もどうせあの美女軍団に、感化された口なんでしょーー
――いやぁ、それほどでもーー
「それでは、いよいよ最終選出にまいりたいと思います。“愛”にふさわしい世界共通語一つ選んでお手元の番号を押してください。押し間違えのないように願います。時間は3分。3分以内に必ず決定してください。なおタイムアップ後の決定は無効票となりますのでくれぐれもご注意ください」
ボタンは臨席者の各々のデスクの右下に取り付けられていた。緑の丸が一番、四角い赤が二番、三角の黄色が三番である。保留の場合は押さなくてもよいことになっていた。
「それでは、スタート!」
掛声に合わせて、ステージ場に電光掲示板の登場とあいなった。青白いろうそくの炎のような光。今、そこには2 59 と刻まれていたが、一瞬にして別の数字に入れ替わった。目まぐるしいばかりの数字の変遷をしり目に、場内は再び沸き立つような熱気に包まれていた。例の一段がアレグロの陽気なテンポでギターをかき鳴らすと、バルコニー席の軍団からやんやの拍手喝さいが起こった。誰もがもうじっとしていられない感じである。大陸の一段は、ジャンベをドンドンパパンパ、ドンドンパパンパとやりはじめるし、バイオリンと二胡が優雅な共演をはじめるは、バレオ姿の女性たちが、タヒチアンダンスを始める頃には、無国籍楽団の演奏は最高潮に達した。ドンドンパパンパ、ドンドンタンタンタンタタン、ドンドンタンタン、タタタタ、タタタタ、タタタタタン。極めつけはサンバホイッスルで、今やバルコニー席はさながらリオのカーニバル場と化していた。騒ぎをよそに、デスクに陣取った人々は、まるでルンビニの菩提樹の下に集う修行僧のようであった。頬杖をついてじっと考え込むもの、腕組みをしながら、革張りのワークェアにふんぞり返っているもの、隣同士でコソコソと密談しているもの。誰も彼も、その顔つきは険しいものがある。それもそのはず、世界共通語、国によっては、毎日、妻や夫や、恋人や両親に向けて、発せることになる言葉が何に決められるか、まさに自分たちのこの指先一つにかかっているのだ。いつのまにかステージ上には、電光掲示板が登場し、濡れたような青白い光がくるくると回転しながら、時を告げていた。120と記されているということは、残り二分ということか。バルコニー席の狂騒は相変わらずで、司会者はやれやれというように黒眼鏡をはずし、達磨のような大きな目に優しい笑みすら浮かべている。とその時、司会席の後ろの方からバタバタと二人の人間が駆け付けてきた。背広にネクタイを締めた二人の男のうち、一人は顔つきから司会者と同様、エーゲ海か地中海沿岸出身者に思われたが、もう一人は明らかにそこからさらに南方の大陸出身者である。三人は餌を食らう鳩のように顔をつきあわせて何やら物々しい様子である。大陸出身者が文書片手に何かを訴える。それを受けてマケドニア風のきりりとした目鼻だちの若者が、至極納得したように大きくうなずいてみせる。ギリシャ人司会者の顔色がまだら色に変わっていく。目が血走って鼻が大きく膨らんでくる。何か一つ言葉を発するたびに、額が大きく上向き、話し終わると顎が下に下がる。まるでいななく馬のそれを見るようである。
「残り、十秒。九、八、七、六、五、四、三、二、一。タイムアップ」
柔らかな流れるような女性の声が時間切れを告げた途端、電光掲示版に文字と数字が刻まれた。その途端場内はなぜか静まり返っていた。
ミル 17
コロ 17
ドゥルアルテドラケス 17
三つの単語が同票と見るや、ソンブレロの軍団が歓喜ともとまどいともつかない調子でギターをじゃんじゃんかきならす。ジャンベがせきたてるような16ビートを打ち鳴らし、やがてバイオリンソロによる野ばらが演奏され、二胡が続きを引き受ける頃には、ギターもジャンベも遠慮してフェードアウトの体勢に入っていった。バイオリンが二挺加わると、二胡の音も止んだ。全く意外な展開だった。バイオリン三挺によるパッヘルベルのカノン。演奏者は、ベルベットのトラハトベストに半ズボン姿の青年たちである。ペストの前ポケットには、国花であるコバルトブルーのヤグルマギクが縫い付けられていてる。キャラメル色の髪が、弓が引かれるのに合わせて、肩のあたりで優雅に揺れる。単調に繰り返される二声の追いかけ合うやや間延びした輪唱が、今のこのもどかしい状況に見事にマッチして、バルコニー席の人々はおろか中央の評議員までもが、うっとりと酔いしれたように聞き入っている。
――ンパンパンーー
手拍子が起こる頃には、人々は総立ちになっていた。バルコニー席を埋め尽くした数百名の人々は、フットボール場も顔負けのウェーブに身をまかせて、もはや世界共通語なんてそっちのけで楽しんでいる。二回、三回と、ウェーブがバルコニー席全体を包み込む頃には、おっとりしたバイオリンの音色すら間抜けなものになっていた。
ーーヒューヒュー、ピィーッーー
とうとうじれた観衆たちが指笛を吹き始めた。それは吹き抜けのホール中に澄んだ小鳥の鳴き声のように響き渡った。鳴りやまない歓声と罵声、拍手喝さい。バイオリンの演奏も聞こえなくなるほどだった。
「ご静粛に願います。さて、見てのとおり、ミル、コロ、ドゥルアルテドラケスの三つの単語は同票であります。協議の結果、バルコニー席の応援団の皆様にも加わっていただき、再度、採決をはかりたいと思いますが、異議のある方は」
意志表示の代わりのようにホール中がいっせいに拍手喝采に包まれた。
「異議はないということですね」
司会者が念を押すと、
“ビィーーー”
と指笛が響いたが、これは祝福のそれだった。
またもやギターがジャンジャンんかきならされ、ジャンベが感激のアップテンポのリズムを刻んだ。二胡が早口の女のようなせわしいメロディを奏で、サンバホイッスルがはやし立てるようにかぶさる。
「ご静粛に、ご静粛。それでは再投票のルールを今から申し上げます。ただ今、係りの者が、投票用紙をお配りします。用紙は一人一枚。ただし、採決の際には、一単語につき、十枚で一票といたします。いささか不均衡な採決となりますが、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます」
そこでまた抗議の指笛が吹き鳴らされたが、これはまもなく止んだ。みんな投票に参加できるだけで大満足なのだ。用紙の配布が済むと一斉に静かになった。さっきまでの騒動が嘘のようだった。まるでホールが一瞬にして受験会場にでも早変わりしたようだった。皆、一心腐乱に投票用紙に向かっている。“愛”という単語が、自分たちの手によって新しく生まれ変わる。そこに立ち会う喜び、世界共通語を自らの手で選べるいう誇り。そのような感情にみんな沸き立っているのだった。そうして制限時間の十分が経った。用紙は速やかに集められ、回収機にかけられ、そうして第三回世界共通語会議は無事に幕を閉じた。
一週間後、D国のJ市の世界共通語会議の本部宛に一通の手紙が届いた。
――世界共通語会議評議会御中ーー
突然のお手紙を差し上げる御無礼をお許しください。まず初めに、この度は第三回世界共通語会議が盛況のうちに終えられましたこと、心よりお慶び申し上げます。私は、山田肇と申します。日本よりこの手紙を執筆しております。F県F市におきまして、“日本語を守る会”を主催しておる者です。我が日本も、一日も早い、貴、世界共通語会議への参加をと願ってやみません。さて早速ではありますが、一言お知らせとお願いがありまして、ペンを執らせていただきました。先般の会議で、“愛”の共通語が、“コロ”に決定いたしまた。これで、”わたし”、”あなた”、
”愛”の三つの単語が世界共通語に認定されたとのことですが、これについていささか困った事態が日本国内、とりわけある地域において起こっております。ご存じのように、日本語の主語には、だいたいにおいて“は”という topic markerの格助詞がつきます。一人称単数は”わたし”ですから、“わたしは遊ぶ”、“わたしは走る”といった具合になります。同じく格助詞の“を”は、動作の対象を表す時に用いられます。“あなたを待つ”、“あなたを選ぶ”となります。これらを世界共通語にいいかえれば、“われは遊ぶ”“おのれを待つ”となります。さて、ここからが肝心なのですが、これに“コロ”をつなげ、古い日本語表現、“す”を終止形の助動詞として書き換えると、大変困った事態が引き起こってしまうのです。現に、インターネット上のさるサイトでは、悪意を持った書き込みにもかかわらず、世界共通語では、“わたしは愛す”という意味だとうそぶく事例が頻発しております。お願いというのは他でもありません。すでに決定しております、“われ”、“おのれ”、“ころ”のいずれかの単語を、再考していただくわけにはまいりませんでしょうか。難しいお願いであることはよくよく承知しておりますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
かしこ
世界共通語会議 rita @kyo71900
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