異世界JKボクサー ガントレットで魔王を倒す!
山岡咲美
異世界JKボクサー ガントレットで魔王を倒す!
天の橋立ここは魔王が天界へ進軍する為に建造した天を目指す塔の最上階、今や天界の雲に手の届きそうな程の高さを誇っていた。
「うら!おら!どうら!!」
深紅の鎧の女が彼女の2倍はあるだろう青い肌の筋肉の化物、黒のブーメランパンツのみでその肢体を包む?スキンヘッド野郎とガチで殴り合っていた、彼女の両手には羽付きの巨大な
「チッ堅い奴だな…!」
そして彼女はガントレットと同じく天使の羽から造り出された、ちょっとカワイイ系の[エンジェルブーツ]を履き軽やかに
「どうしたのん、ボクを止めるのではなかったのん?」
その筋肉野郎は野太い声でそう言うと、シンプルにそして巨体からは想像も出来ない程の刹那の動きで彼女の前へと近付き只々単純に殴り付けて来た。
「速い!!」
彼女は
「クッ、シールド上からでもこの威力か…」
彼女のボクサーとしての完璧なガードも天使の盾も彼女を護りきれてはいなかった…。
「さすがふざけた格好でも魔王は魔王ね」
彼女は舌を唇の右から左へと這わせた…短い前髪が汗でオデコに貼り付く…。
そう奴が、この筋肉至上主義者が魔王、この物語のラスボスである。
***インターハイ女子ボクシング***
「何?…」
彼女はリングの上に倒れていた。
「大丈夫か
リングサイドからセコンドの男が彼女の名を叫ぶ。
「トレーナー?」
彼女は何があったか考える、手には赤のグローブ、赤のヘッドギア、赤のノースリーブシャツ、赤のトランクス…赤のボクシングシューズ…あたし赤コーナだ…。
「
彼女の母親が観客席から駆け寄ろうとするのを止められている。
「お母さん?」
薄れゆく意識の中、母親の顔がぼんやりと見える。
「あたし、ダウンした?何故?ヘッドギア着けて…高校の、あれ?血の気が?寒?…何かスーとして気持ちいい、目の前、白くて何か綺麗…」
***???***
「大丈夫ですか娘さん?」
(何?…誰?、男?顔近っ!、?、??)
愛のぼんやりとした意識のなか断片的な情報が入って来る。
「ち?痴漢?痴漢か?痴漢だな!!」
愛はまず位置が悪いと判断しベッドから転がり落ちる、そして男の横をすり抜け立ち上がり男の前で素早く低く構える。
「ん…?なんです?…?真っ暗闇だ……」
男の鼻に綺麗に入った左のジャブはその衝撃を鼻の奥から脳幹まで貫いていた。
「まだだ痴漢野郎ーーー!」
男がコイツヤバイ奴だと思った時にはもう遅かった、鼻を打たれた男は少し顎を上げており小さくガードに回りかけた愛はここぞとばかりその思考を右アッパーカットへと代えていた。
「ちょっ!まちっ!!待ちなさ…」
男は真っ暗やみの中あさっての方に顔を向け、両手を待てとばかりに前にだした。
まず結果を先にご報告しょう、男の前歯8本が吹き飛びました。
***教会***
愛はどこかの教会で目を覚ましたが、起き抜けに牧師様を殴ったらしかった。
「ごめんなさい!牧師様!!」
愛が前歯を吹き飛ばした牧師様が愛に笑顔を見せ目の前に居る、その歯の抜け落ちた口からはダクダクと血が流れ赤で統一された法衣に滴っていた。
(目立たなくて良かった…)
愛はそう思ったが、良くはないだろう。
「ふぃにふぃなふぁららいれふなふぁい…」
「気になさらないで下さい」らしい。
「あのこんな時に申し訳ないのですが、ここはどこですか牧師様?」
愛にとっては牧師様の状況より情報らしかった。
「…ふままひは、はひひ、ひろうほ、ひたひほらは…」
「すまないが先に治療をしたいのだが」当然だ。
「あ、すいません、ど、どうぞ」
愛は確かに治療しないと話が聞き取りづらそうと、明後日の理由で治療をうながした。
ここは教会にある治療室のようだ。
「よろしいですか?ロー牧師…」
医師?らしき栗色のふんわりショートボブの女性がロー牧師の口をゆっくりと開け、赤いフレームのメガネで覗き込む…。
「ふまわいねワーハ」
「すまないねマータ」名前の紹介を兼ねての会話劇なのに愛のせいで台無しだ。
「少し痛むかも」
その白衣お姉さんマータは消毒液と見られる薄く赤い液体の入った洗面器に手を浸し、その後にロー牧師の口の中へと指を入れ直接歯の失われた歯茎辺りを撫でながら、ボソボソと何かを唱え始めた。
「あ、歯!」
愛はその光景に驚きを禁じ得なかった、歯が生え始めていたのだ。
「魔法を見るのは初めて?お嬢さん」
魔法医師マータが愛に質問する。
「娘はんは魔法を知っているはね」
未だ口に指が入ったままのロー牧師もそれに対する彼女の答えに興味がある風だ。
「これは…歯、跳ばしたい放題ですね!」
彼女はろくでもない一言を歯を跳ばされたばかりの牧師様の前で言い放った。
「娘さんはその…何だ、よくある事なのかね、歯を…」
治療が終わりロー牧師は歯や顎の具合を確かめる様に手で頬や顎をさすっていた。
「あ、いえ、試合ではグローブ、あの、パンチの威力を減らすの着けるし、ヘッドギアって言う頭を守るの着けるし、まずマウスピースあるから…なかなか跳ばない」
なかなか跳ばない……。
「…娘さんは拳闘士なのかね」
ロー牧師は目を丸くしながら愛に質問した、どうやら魔法より女性の拳闘士は珍しいらしい。
「そうですよ、あたし
愛はロー牧師に対し見事なVサインをかます。
「あれ?…」
「あの、あたし制服?」
「ん?グローブは?バンテージ?シャツ?トランクス?シューズも??」
愛は彼女が通う高校の制服、紺のブレザーで長めのプリーツスカートそして彼女こだわりの赤いネクタイまでしっかりと閉めていたのにたった今気づいた。
「お前かーーーーー!!」
愛は叫びロー牧師の顔が青ざめる。
「お嬢さん、少し考えていた行動してね」
魔法医師マータが先程と同じ治療をロー牧師にほどこした。
「すいません、もしかしたら牧師様に剥かれたのかと思って…」
愛は舌をペロって出して軽めに謝った。
「はあ…」
魔法医師マータはため息をつく。
「まあ娘さんは事情を知らないだろうから仕方があるまい」
ロー牧師はこのままでは話が進まないとばかりに説明を始める。
「まず娘さんは死んでおられる」
あなた死んでますよ…おかしな言葉だ。
「あたし死んだの?」
愛には心当たりがあった。
「まっ、リングの上ならそう言う事もあるか…」
愛は自身の死を軽めに受け止めた。
ロー牧師と魔法医師マータは顔を見合せる。
「まあ死に対する考えはそれぞれだ、まず何から話そうかね」
ロー牧師はどう言ったものかと考える。
「あの、まずここ何処ですか?あなた達は誰?…リングに、試合会場に居た筈なんですけど…天国じゃあ無さそうだし」
愛はリングに居たことは覚えており、死んだあとは天国に逝くつもりだったらしい。
「そうね、ここは[ナクール共和国]
魔法医師マータはここを異世界と
「あたしは[拳崎 愛]高校生でボクシングをやっています」
…愛も静かに自己紹介をした。
***教会大回廊***
「これって…」
愛は治療室から出てここが戦地だと気づく。
「ごめんなさい愛さん、もっと休ませてあげたかったんだけど…ロー牧師、
魔法医師マータはそう言うと大回廊にあふれていた傷病者を治療室に入れるよう促した、良く見ると大回廊には同じような治療室が並んでおり愛はその一つを占有して居たらしい。
「愛殿には説明が必要ですな…」
ロー牧師は神妙な顔をし、愛に申し訳無さそうにそう言った。
二人は大回廊を歩き大聖堂をめざす。
「まずは愛殿、貴女がここにおられるのは私達がある儀式をおこないお呼びしたからです」
「儀式?」
「ええ、それは勇者を造り出す禁忌の魔法、本来ならば使うべきでは無いものです」
「でも使った?」
「はい、禁忌の魔法、勇者召喚は88名の魔術師を八方魔法陣、オクタグラムに並べ召喚した異界人の魂にその魔力をもって強靭な肉体をこの世界で与えると言うものです」
「じゃあ、あたしは?」
「ええ、貴女の
「
「貴女だったのは偶然です、おそらくはこちらの儀式の時にあちらで死を迎えられたのだと思います、そして
そう言うとロー牧師は大聖堂の扉を開いた。
***教会大聖堂***
「良く来てくれました異世界の勇者よ、
巨大なエンタシス柱の立ち並ぶ大聖堂中央に人より一回り大きな女性が真っ白なイオニア式キトン(古代ギリシャ様式の衣服)を身に纏いそこに立って居た、軽く柔らかな金色の髪が肩の辺りでフワリと巻いている。
「天使?」
そして愛が何より驚いたのはその身長では無くその背にある白く美しい翼の方だった。
「こちらは勇者愛殿、異世界の拳闘士で…コウコウセイ?です」
ロー牧師が慌ただしく愛の紹介をする、どうやら事態はかなり切迫しているらしい。
(ちなみに高校生は通じなかったようだ)
「あの…拳崎 愛です」
愛は天使を見るのは当然初めてだったが、やっぱ神様とかの遣いっぽいし一応丁寧な挨拶をしてみた。
「まずは勇者愛、貴女にこれを」
天使ハネエルは指を差す、そこには18人のドワーフ魔法鍛冶職人の兄弟が
おおよそ人に扱えるとは思えない程の巨大で肉厚な片手長剣[勇者の
そしてその重い
更に深紅に彩られ
魔法に対し絶対防御を誇る黄金で縁取られた純白の聖布[勇者のマント]
?
?
?
天使…
天使の装備は??
…プロローグ(最初の魔王戦のくだり)覚えてる?
確か装備に天使の羽から造られた…
[エンジェルガントレット]
[エンジェルシールド]
[エンジェルブーツ]
っての装備して闘っていたような……。
「勇者愛、
↑
天使様がとっても大切な設定を話していますが…この天使様は後で羽をむしられます。
「そして勇者よ今まさにこの地に悪意ある者共がやって来たのです、天より
↑
「翼無き堕天使」とか言っている天使ハネエル様も
「事態は切迫しています、彼等は勇者の力の危険性を知ってここへ来たのです」
↑
「勇者愛、どうかこの世界を魔の者共から護って下さい」
↑
シリアスな話が台無しです。
「申し訳ない愛殿、我らの力では
ロー牧師は深々と頭を下げる。
↑
この人は
「大丈夫だ勇者様、おれ達18魔法鍛冶職人の造った勇者装備に異世界転生勇者様の力が有れば最初から最強だぜ!!」
ドワーフにしては珍しく短髪髭無しの分厚い作業着の男[魔法鍛冶師セブン]がそう言った。
↑
この人達が天使ハネエル様の羽から天使の名を冠する装備を造ります。
「そうです勇者様、
そして18魔法鍛冶職人唯一の女の子、白いドワーフヘアを一つ編みに束ね、チューブトップに皮のショートパンツ腰からぶら下げた工具カバン、チビの[魔法鍛冶師イレブン]が胸をドンと叩いた。
↑
この人がカワイイ系エンジェルブーツをむしられた羽で造ります。
***勇者教会絶対防衛線***
「魔王の側近、双剣王2人が戦線に投入されて以来酷い有り様で前線は瓦解寸前です!」
教会騎士団のダン団長が愛に戦況を告げる。
「あたしがそいつらを倒すのね」
愛は勇者の装備をフルでまとい、城壁の上に立っていた。
勇者教会と呼ばれていた愛の居た教会は城壁都市で教会を中心に街がありその周りを城壁が囲んで居るのだが、勇者召喚の噂がたって以降魔王軍の進行が始まりついには魔王の側近、双剣王までもが戦線に投入されたのだ。
「若い芽摘みにかかるなんて、底意地の悪い魔王ね」
愛はよく物語に有る敵が一人一人現れる燃える展開ってリアルな戦場には無いんだね、とガッカリしたがこれはこれで有りかもと胸が高鳴った。
愛は基本闘いに燃えるタイプだ。
「城門を開けろ!勇者様を双剣王の元へ!」
城門が開く、分厚い木製の扉を鉄の格子板で覆っている
「結構行けそうかも」
愛は馬鹿重い剣をくるりと手首で回し、肩へ担いだ。
ちなみに言っておくと勇者は馬に乗れなかった為、徒歩での御出陣とあいなっていた。
「ヨーイ、パーーーン!!」
ふざけた掛け声と共に愛は一気に前線まで駆け上がる。
「勇者様?」
戦線の教会兵士達は瞬間、風のように走り去る勇者と勇者が凪ぎ払った敵、翼無き堕天使軍の兵士達の崩れ去る巨体を目にする。
「まるで斧でも叩きつけられたみたいだ…」
教会兵士はその力に震えた。
「大丈夫、闘える!」
愛は自分の
「調子ににに!のるるなななあ!!!」
振り抜いた勇者の剣が何かにぶち当たる。
「黒い鎧の大男?バスターソード二刀流、バスタエルか!!」
愛は一瞬、冑の隙間からバスタエルの金色の瞳と目が合う。
「バスタエルだけじゃあああ、ないいのよよよう!」
後ろに気配を感じ愛はそちらを見る事も無く勇者の盾で殴り付ける。
「レイピア二本、青と黒の斑模様の鎧の女、レイピエル!!」
ゲームやアニメの初戦では有り得ない程の大ピンチがここには有った。
「知った事か!」
愛はそう言うと、迷い無く一気に交戦常態に入る。
「コイツう当たら無いじゃああ無いいい!」
レイピエルのレイピアは勇者の盾に阻まれる。
「むう!!誠に器用うう!!」
バスタエルの攻撃は一撃めを勇者の剣が受け止め二撃目を打とうとすると愛が勇者の剣と共に懐に入って来る為にバスタエルは引かざるおえない状況になっていた。
「「「埒が明かない!!!」」」
3人共がそう思ったが愛の判断は早かった。
「ぬぬ!
バスタエルが棄てられた
「な?何だあああ!!?」
レイピエルが見たものは目の前に投げ棄てられた勇者の盾!
「下だレイピエルるるるる!!!」
レイピエルはバスタエルの忠告の意味に気付けなかった。
「遅い!」
愛の口許に笑顔が見える。
「何だああこの近さわあああ…???」
それはボクサーのシュートレンジだった。
愛はフェイントも入れず下から蛙の様に飛び上がり、右のフックでレイピエルの首をもぎり折った。
「何だあ…体があ…沈むむ…?」
頭からの連絡を失ったレイピエルの巨体は何の受け身も無くただ地面へと崩れ去る、レイピエルの頭は、その目は、その光景を何も出来ず見続るしか無く、最後には体と逆方向を向いた顔で空を見上げていた。
「…天界が…天界が見えるう………」
レイピエルの銀色瞳に涙がこぼれる。
「おおお!レ、レイピエルるるる!!!」
バスタエルが怒りに震えている。
「ソレジャダメダヨ」
愛は闘いにおいて常に冷静さが大事だとトレーナーに言われ続けていた、愛はとことん
「もう一回だ!」
愛は一瞬、先のレイピエル戦のようにバスタエルに跳び寄る様に見せバスタエルが誘いに乗ったと見るや、一度立ち止まりバスタエルの剣撃を目と鼻の先に落とさせた。
「ほらもう、あたしの距離だ」
バスタエルは体が硬直してしまっている、初めての感覚、それは恐怖だった、彼は
「むぐうん!!」
バスタエルは頭を護ろうと両手を頭の前で交差させる。
「素人のガードだ…」
愛は鎧の大男の脇腹を殴り付けた、普通なら鎧がバスタエルを護っていただろうが、相手はフル武装の異世界召喚勇者だ、バスタエルの内臓の原型を崩すのに十分な衝撃をその鎧の外側から筋肉、内臓へと確実に伝えていった。
「うぶぶぶぶぅぶうう!!!」
バスタエルの口から溶けた内臓が溢れ出し冑の内側にぶつかりそして鎧を伝わり落ちていく。
「じねええぇ!」
「死ね」と言ったであろうバスタエルは大剣を振り上げるが、愛は素直に後ろに退いた。
「倒れてもカウントは要らないよね」
バスタエルは最後の力を振り絞って愛を捉えようとその両手の大剣を振り続けるが愛は軽いステップで距離を取りバスタエルの死を待った。
「ああ、バスタエル様…」
もはや意識があるかも定かで無くなったバスタエルの姿を見て敵兵士が戦意を失わせていく。
そしてバスタエルは動きを止め、大地に両膝を着き息を引き取った。
魔王軍は戦意を失い勇者に対する恐怖と共に敗走した、勇者教会軍の勝利である。
***勇者教会大聖堂***
3日後
「勇者愛、貴女が何を言っているのか分かりません」
天使ハネエルは静かに語る。
「大丈夫ですから、優しくむしりますから」
愛は制服の手に魔王の側近、双剣王すら倒したガントレットを装備して優しく言った。
「18魔法鍛冶職人、彼女は勇者は何を言っているのです」
天使ハネエル様は愛の
「実は先の闘いの
魔法鍛冶師セブンと魔法鍛冶職人達はもう造りたくて造りたくて仕方がないって感じだ。
「ハネエル様の羽、とってもカワイイブーツになるんですーーーー!!」
魔法鍛冶師イレブンはもう目が逝ってる。
「ロー牧師!」
天使ハネエルの問いかけにロー牧師は深々と頭を下げる。
「魔法医師マー…」
魔法医師マータは静かに微笑み天使ハネエルは一歩その足を
***天の橋立最上部***
「人間とは何て身勝手な生き物でしょうん」
ブーメランパンツの魔王は嘆く。
「何を言っている、天使様は心良く協力してくれたんだぞ!」
↑
愛は逃げ惑う天使様の背に跳び乗り泣き叫ぶ彼女から羽をむしり続けたと言う。
「ふざけるなん!罪人でもなければそんな酷いめに会わんのだぞん!」
翼無き堕天使である魔王は手羽先天使テバエルに同情した。
「あたしはふざけてない!今できる最善の選択をしているだけだ!テバエルは可哀想だけど、これで魔王、オマエをボコるから!」
愛はぶっちゃけて話す、ちなみに天使の名は[テバエル]では無く[ハネエル]だ。
「ぐぬぬん…だからボクは
魔王は目頭を押さえ涙をこらえる…。
「オマエそうやって隙を見せてるけど…薄目開けてるだろ!」
愛はしっかりと気づいた。
「チッ」
魔王の舌打ち。
「「この腹黒が!!」」
2人共にそう思った。
「うらっ!!!!」
愛は戦闘を再開する。
愛は基本のワンツー、左から利き腕の右への攻撃へ繋げるコンビネーションを中心に闘い、魔王がそのコンボに慣れ始めると、左からフック、左からボディと繋げていき更にボクシングスタイルの闘い方へと引き込んでいった。
「面白い闘い方をするのねん、でもボクはこのワガママボディ、筋肉の装甲に守られているんだよん、君の攻撃は致命打にはならないのよん」
「どうかな、徐々にボディが効いている筈よ!」
愛の狙いは実のところボディでは無い、最初から頭部への攻撃だ、基本頭に入れば体重差に関係なく相手をKO出来るのだ、要は脳を揺らせば良いのだ。
「勝負!」
愛は小さく呟き瞬間的加速から懐へと潜り込む、そして狙い通り頭部へ低い位置からパンチを跳ね上げる、左のアッパーカットだ!
愛は最期の最期、利き腕を囮にして左を狙っていたのだ!
「ちゃあんと見えてるぞん!」
しかし魔王は先を読んでいた、愛の加速に一瞬だけ身を硬直させた振りをしてから、アッパーカットのタイミングで身を
「ぐるポううんんんぐぶ……@?」
魔王の顔がよじれ青い肌が赤く染まっていく。
「オマエん…*☆▽@@*&??」
「右のん…★〇∞%#…手どん☆?!?」
愛の右手のガントレットが無い!
「魔王のボクちゃん?これボクシングじゃ無いのよ♪」
愛はニコリと微笑むとエンジェルブーツの力でフワリと浮き1回転ターンと共に距離を開ける。
そして魔王の股間にはエンジェルガントレットがめり込んでいた。
[エンジェルガントレット]その名の通り天使の羽の加護を受けた装備でありエンジェルシールドと同じように自立飛行するのだ。
「天使の加護をん…何て事に…使うだんてんんん……」
魔王は痛みで動けない。
「くるわうええええええっ!!!!!」
愛はエンジェルブーツで
文字通り射ち抜いたのだ…愛の
勇者の、そして全地上界人の、勝利の瞬間だった。
***インターハイ女子ボクシング***
「拳崎!拳崎しっかりしろ!」
セコンドの声が聞こえる。
「愛ーー!愛ーーー!」
母の声も聞こえた。
「何?」
「あたし?どうしたの?ダウン?
愛はセコンドに就いてくれて居たプロジムのトレーナーの方を見る。
「転んだんだ!ロープに足引っ掻けて!」
トレーナーはふざけるなって感じでそう言った。
「鼻痛!」
愛はダウンした訳でも死んだ訳でも無かった、ただ顔面から転んで強く鼻を打ったらしかった。
「えっと…じゃあ…試合といきますか?」
愛は軽く答えた、異世界で死んだって言われた時も彼女は軽かったし生きてれば更にこんなものだった。
「鼻、診てからな」
トレーナーは呆れた感じで言った。
「あっ、鼻血…」
愛は取りあえず魔王の事や異世界の事は忘れインターハイ女子ボクシングへとスイッチを切り替える、彼女のもっとうは「今出来る事に全力を尽くす」だからだ。
「赤コーナーだし汚れても平気だよね」
彼女の闘いはこれからも続く。
END
異世界JKボクサー ガントレットで魔王を倒す! 山岡咲美 @sakumi
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