第5話 願いが叶う日

 その間、私は色々考えた。

 

 仕事のやりにくさを改善したくてチーフに相談したら、あっけなく解決した。

 他の人の協力も得て、更に改善する事になった。

 同僚に感謝された。「私もやりにくくて、でも云いづらくて」と皆同じ事を思っていた。


 CMで見た女優が綺麗だったので、髪型を真似した。

 今までは、楽だという理由でボブのパーマにしていた。

 それを縮毛矯正をかけて一気にストレートにした。さらさらになった。

 会社では同僚に「似合う」と云われた。

 

 髪型に似合うメイクをしたいと思った。

 CMで見た綺麗な女優がモデルをしている化粧品を買ってみた。

 どれが良いかよく解らないので、何色も入っているアイシャドウパレットを買った。

 スマホで化粧品のサイトを見て、その通りにアイシャドウを塗った。

 会社で評判の美人社員に「それどこのアイシャドウ? 難しい色なのに似合ってるね」と云われた。

 とても嬉しかった。


 通勤靴のかかとが減っていたので、新しい靴を見に行こうと決めた。

 今まではスニーカーだったけれど、流行のサイドゴアブーツが可愛く見えた。

 サイドゴアならロングスカート系も良いかも……。

 サイドゴアを買い、ロングスカートを買った。

 ずっと前にセールで買って、全然着ていないニットと合わせた。良いじゃないか。


 金曜日、平日の最終日で気持ちがほんの少しだけ楽な日。

 先日購入したサイドゴアとロングスカートで出勤した。

 仕事帰り、デパートに寄ってみた。明日は休みだから、寄り道も出来る。

 デパートで会社の人に会った。以前同じ課にいた、エリート男子社員の秋田さん。

 

 優秀な秋田さんは、エリート課に引き抜かれた。

 私と秋田さんは、そこそこ仲が良かった。

 そういえば、秋田さんがいた時は愉しかったな。

 自分の力でほとんどの事が出来る秋田さんは、上司にもはっきり自分の意見を云い、私たち下の者の意見も聞いてくれた。

 秋田さんがいなくなってから、つまらなくなったのだ。そういう事すらも忘れていた。


「久しぶり、春陽さんの私服オシャレだね」って云われた。

 私と秋田さんは、連絡先を交換した。

 わくわくしてきた。

 気持ちを一つ変えただけで、こんなに変化があるなんて。

 

 秋田さんと次の休日に、クリスマス用イルミネーションを見に行こうと約束をした。

 お互い恋人がいないので、一緒に見に行こうという事になった。

 イルミネーションの会場では、全国各地のグルメコーナーもあるらしい。

 行きたいと思っていても、さすがに一人では行きづらい。誰かと一緒でなくては足を運べないイベントだ。


 明日はクリスマス。クリスマスを一緒に過ごす為に恋人を作る人がいると聞く。

 私もそれに乗っかれるだろうか。

 秋田さんから何か、メッセージが来るだろうか。

 私はお風呂上がりに保湿パックをしながらテレビを見ていた。


―ピピッ。テレビに速報テロップが流れた。


―突如出現、巨大隕石が日本の東北地方に墜落の恐れ―



 私の想いが強くて、ついに叶ってしまうのだろうか。

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願い 青山えむ @seenaemu

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