第4話 冬美と私
夢を見た。登場人物は高校時代のクラスメイト、冬美だ。
冬美は大学卒業後、大商社に入社した。県内トップクラスの企業だ。
仕事は難しくて量が多く、顧客にもよく怒られているようだ。
給料はそれ相応に高いようだが……上司のセクハラが日常になっているらしく、女子社員は諦めている様子だった。
残業はほぼ毎日あるらしい。残業禁止の金曜日は合コンに行っているようだ。
あんなに疲れているのに、美容情報を集め、自分の手入れを欠かさない。
冬美は可愛い。肌がつやつやしていて、髪の毛はいつもさらさらしている。
夏でもロングヘア―が爽やかだ。
場面が変わった。
合コンに行きまくっていた冬美に、彼氏が出来たようだ。
やっと見つかった彼氏はバツイチだったらしく「子どもが俺と暮らしたいと云っている」という言葉を最後に別れたようだ。その間、三か月。
冬美は一人で沢山泣いて、親友にだけ事実を話していた。
泣きはらした目元を冷やして、何事もなかったかのように仕事に行っていた。
私は先月クラス会で冬美に会っている。
冬美は可愛いだけではなく、明るくて性格が良くて皆に好かれている。
クラス会では、お見合いパーティーに行くと云っていた。
私たちが驚いてたら「友達とごはん食べに行くんだよ」と笑顔で云っていた。
健気、その一言だ。
夜中に目が覚めた。
【どうだった?】光るボールが聞いてきた。
冬美は何であんなに、笑顔でいられるの?
大商社に入社した冬美が、羨ましかった。
仕事をしてお金が手に入るなら、不安な事は何もないだろうと思っていた。
冬美は、給料以上に辛い事があるのに、何であんなに笑顔でいられるんだろう。
「私の仕事は違う意味できついけれど、客に怒られる事はないし、給料的には……」
何をどう比較したらいいのだろう。
【いつまで他人と自分を比べているの?】光るボールが云った。
【何を以って、幸と不幸を決めているの?】
何を以って……何だろう、解らない……。
誰かよりマシなら幸せで、誰かを羨ましいと思えば不幸で……。
私、そう云っている。とても怖いしダサい。
そう思った瞬間、光るボールが消えた。
カーテンの隙間から光が射した。朝が来た。
その日の夜、光るボールは現れなかった。
次の日も、その次の日も、ずっと現れなかった。
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