第37話 姉と弟


 休日地元の駅にて会長と待ち合わせをしていた。

 約束通り会長に頼まれて、会長の思い人へのプレゼント選び。


 妹には今日の事を散々説明したけど、「お兄ちゃんのバカ鈍感! だから私の気持ちも今までわからなかったのね?!」と言われた。てか、それはお互い様だろ?


 喧嘩とまではいかないが、やはり黙っていた事に腹を立てていた妹。

 僕は妹に、ここでは言えない様な歯の浮くセリフを連発して、なんとか取り繕い、妹も昨日までは今日の事を気にしない様振る舞っていたけど、やはり今日の朝出かける時は当然出迎えもなく、僕の「行ってきます」の声にも返事はなく、最後まで部屋から出てくる事もなかった。


 家を出る際、もの凄く後ろ髪を引かれたが、約束を破るわけには行かず、断腸の思いで待ち合わせ場所に来ていた。



「お待たせ……」


「──あ、おはようございます」


「ふふふ、おはよう」


 時間ぴったりに来た会長に僕は思わず目を奪われた。

 会長は深紅のワンピース姿にやや高めの黒いヒールを履いていた。

 日本人離れのスタイル、さらには金髪も相まってもうモデル以上……その着せ替え人形の様な出で立ちに僕は思わずみとれてしまった……それにしても……足長っ!


「どうしたの?」

 会長がそう言って不思議そうに僕を見る……いや、だってなんか……凄く……綺麗だったから……。


「……いえ、似合ってますねそのワンピース」


「そう? ふふふ、ありがとう……さあ、いきましょう」

 そう言って会長は僕の腕に自分の腕を絡める。


「え、ええええ!」


「今日はエスコートしてくれる約束でしょ?」


「……いや、まあ……」

 そこまで言った記憶は、かといって振りほどくには失礼だし……。


「天気が良くて良かった」

 会長はそう言い、そのまま空を見上げる。会長の髪が日差を浴びてキラキラと輝き出す。

 何か人間離れした……そう宇宙人の様な神秘さを感じる。

 てか、元々僕よりも高い身長でさらにヒールを履いているので現状頭一つ位高い……なんかどこかで見た様な、宇宙人が発見された時の写真を思い出す。

 この場合、宇宙人は僕の方だけど……。


「えっと今日はどこに?」


「……そうね、それも含めて陸君に選んで欲しいのだけど」


「選ぶ……って言われても」


「良いのよ何でも、陸君が欲しい物で」


「うーーん……」

 僕が欲しい物……突然そう言われても、そもそもあまり物欲がないので何でもと言われても……思い付かない。


 とりあえず自分のクラスの男子に好意を寄せている会長の為に、同じ年代の男子が欲しい物を考えてみる……欲しい物……彼女……妹……。


 いやいや違う……それは僕がって、そうじゃない。

 あたふたと考えを打ち消して、再考する。


 とりあえず……ショッピングモールに行くか。


 買う物が決まらなければ、なんでもあるところに行けばいい。

 そんな乗りで会長に提案すると、会長はニッコリ笑って受け入れてくれた。


 なんか……こういう事に手慣れた感じで、僕は少しショックを感じた。


 まあ、当然一つ年上、しかも美人……見るからにお金持ちそう……。

 

 モテるんだろうな……会長って……。


 こんな美人に好きになって貰える人って、どんな奴なんだと、クラスの男子の事を思い出す……。

 

 いたっけそんな奴?


 別にコミ障ではなかったけど、妹目当てに話しかけてくる奴が多くクラスの男子と今まであまり仲良くなっていない事に気が付く。

 そうか……僕あまり友達居なかったな……。


 今まで女子達からは距離を置かれ、男子は距離を置いていた為……晴れてボッチの出来上がり……等と考えながら、会長の歩幅に合わせてショッピングモールを目指して歩く。


 妹と歩く時は気にした事もない距離と歩幅、小さい頃からずっと一緒に居て、共に成長してきたので妹の歩幅も大体わかっているし、一緒に寝たりお風呂に入ったりしてた位だから、お互いの距離なんて無い様な物。

 買い物にも一緒に行く事が多くこんな事は気にした事が無かったので……こうして女子と一緒にデートのみたいに歩いて見て、改めて新鮮だな……って感じる。


 ……デートみたいに……妹以外のデート……そうか……デートってこんな感じなんだなと僕は今実感していた。


 そう……僕は良くも悪くも妹しか知らない、ずっと妹の事が好きだったから、女子と付き合ったりデートしたりなんてした事が無い。

 だから、今……妹と付き合う事になって、僕はどうしていいか、わかりかねている……。


 こういう事の経験値が無さすぎて、これから妹と、どう関係を深めて良いのかわからないでいた。

 だから、今日僕はちょっと楽しみだった。


 会長の買い物に付き合う、こういう事に慣れていそうな会長から何か掴めるかも知れない……って……そう思って来ていた。


 初めて……妹以外の女子とデートみたいな事をする。

 妹には少し申し訳ないけど、逆の立場なら凄く嫌だけど……。


 でも、これは僕と妹の為でもある。


 とりあえず会長にも僕にも好きな人がいるのだから、安心してデートの練習が出来る。

 年上で、美人で……そう、会長ってなんか……お姉ちゃんみたいな、一緒にいて今、そんな感じがしていた。


 


 


 

 



 


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実は義理の兄妹だったのだけど、周りは実の兄妹って思ってます。でもそろそろ限界なんだけど。 新名天生 @Niinaamesyou

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