54.3 薫の手紙と浮舟の生きる道
✈✈✈Let' go to SenmojiGenji
事態が進まないので、妹尼が小君を屋敷内に入れて話を聞くの。薫からの手紙を直接浮舟に手渡したいって小君が言うので、妹尼は浮舟を几帳のそばまで連れてきて受け取らせるの。小君は(薫への)お返事をいただきたいって浮舟に伝えるの。
薫からの手紙は懐かしい筆跡で、紙の香りもとっても高級なの。ちらっと覗き見する妹尼にも美しい手紙だってわかったみたいよ。
「尼になってしまったって聞いたよ。あのこと(匂宮とのこと)も行方をくらましたことも出家したことも何もかも許すよ。僕の悲しみがどんなだったか話がしたいんだ」
罪つくりなことをしたけれど、すべて水に流して話がしたいって書いてあるの。
~
(仏法の師匠と仰いで僧都を道しるべにきたけれど、思いがけない恋の山に迷ってしまった)
さすがに浮舟も感極まって涙を流すの。でもいまさら薫の前にのこのこと出ていくことなんてできないと思う浮舟はこんな手紙に心当たりはありませんって答えてしまうの。
それはあまりにも失礼なんじゃないかしら? って妹尼が言うんだけれど、浮舟は顔を伏せてしまうの。仕方ないので妹尼は小君にありのままのことを薫に伝えてと話すの。結局小君は浮舟の顔を見ることができないまま、都に戻って行ったの。
薫は小君が帰ってくるのをいまかいまかと待っていたんだけれど、小君の話を聞いて心底がっかりしちゃうの。
こんなことなら直接行けばよかった、いや待てよ、昔の自分みたいに今は別の男が浮舟をそこで匿っているんじゃないの? と薫はあれこれ気を揉むのよね。
……そんな風に物語の本には書いてあるらしいわ。
第五十四帖 夢浮橋
源氏物語 完
To be continued ✈✈✈
🖌Genji Waka Collection
~
薫が浮舟にあてて詠んだ歌(源氏物語最後の歌)
◇第五十四帖手習でした。
episode54 これからの道 夢浮橋
54.1 浮舟のもとへ
54.2 人違いだと思います
54.3 薫の手紙と浮舟の生きる道
◇「えっ!! これで終わり??」
今までのことはすべて許すから話をしようと書いた薫の手紙を浮舟は拒否しました。
「浮舟ちゃんの気持ちもわかるけれど、薫くんだってこのまま引き下がらないんじゃないの?」
「それなのに物語は終わっちゃうの??」
この時代、女性の生き方は限られていました。男性と結婚して庇護を受ける以外の道はあまりなかったのかもしれません。
源氏物語全体を思い返すと藤壺の宮が夫である桐壺院が亡くなったあとに源氏の想いを拒んで我が子の冷泉帝を守るために出家しました。
源氏の従姉弟の朝顔の君は源氏からのプロポーズを受けず、自身の意思で出家しました。
朧月夜は朱雀院の妻でありながら源氏とも付き合いを続け、朱雀院が出家したあとしばらくして出家しました。
紫の上は朧月夜や女三宮の件で傷つき源氏のそばを離れる決意をし、出家したいと源氏に願い出ましたが、最後まで出家させてもらえませんでした。
そして最後のヒロイン浮舟の選んだ道です。匂宮とのことは過ちだった。薫が許してくれると言っても自分自身が恥ずかしい。いままでは浮舟のように流されてきた人生だったけれど、これからは自分の意思で歩いていく。そのための出家なのだと。
「そうだったね。紫ちゃんは自由になれなかったもんね……」
「そう考えると、浮舟ちゃんは自分自身で生きる道を決めることができたのかな」
そうとらえることもできそうですね。
「そっか――。女子の生きる道ねぇ……」
源氏物語の時代から千年。女性も人生においてさまざまな選択肢を選べるようになりました。
「源氏物語って深い物語なんだね」
だからこそ、千年も読み継がれ、多くの学者が研究し、世界の多くの言語に翻訳されています。物語の絵巻も国宝です。
「それにしても、ホントに終わりなの?」
「まだまだ読んでいたいよ」
余韻を残しての完結ということでしょうか。源氏の最期をタイトルのみで表現するなど、紫式部は余白の表現が秀逸です。読み手の想像力を膨らませてくれますね。
2020年の4月から初めてきた「源氏物語」も今日で完結しました。『1000文字源氏物語』としては明日のおさらいで最終話です。
NEXT↓
第三部 さらりとおさらい
topics3 世界最古の三角関係?
☆こまちのおしゃべり
【別冊】源氏物語のご案内
topics47 源氏物語フィナーレ!
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881765812/episodes/1177354054887020877
永遠に続くと思ってたんだけどな……。
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