54.2 人違いだと思います

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 そうして小野の妹尼のところに横川の僧都の手紙が先に届くの。薫の使者がそちらに着いたかとか、早まって出家をさせてしまったことを悔やむとか書いてあって、妹尼には何がなにやらわからないみたい。浮舟はとうとう自分のことが薫に知られてしまったと動揺してしまうの。

 それからすぐに小君がやってくるの。小君は預かっている僧都からの手紙を差し出すの。

薫大将かおるのたいしょうの君がおいでになりあなたのことを聞かれましたので最初からお話しました。恋人がおありのあなたを出家させてしまったことを後悔しています」

還俗げんぞく(俗世に戻ること)して薫の君と夫婦に戻ってはいかがですか?」

 僧都の手紙は浮舟以外の人たちには何の話だかよくわからないみたいなの。

「あの子はあなたのご家族なの? あなたは(恋人のことも家族のことも)秘密になさるのね」

 妹尼は浮舟がまだ薫のことを隠そうとするからいらっときちゃったみたい。


 御簾の向こうには懐かしい小君の姿が見えるの。弟を見ているとお母さんのことが思い出されて浮舟はぽろぽろと涙をこぼすの。

「ご姉弟なんじゃないの? 座敷にお通ししましょうね」

 妹尼はそう言ってくれるのに浮舟はこのまま死んだままにしておいてほしいし、尼になった姿で身内に会いたくないって言うの。

「このまえいらした(薫の従者の)紀伊守きいのかみのお話に知っている人が出てきて記憶が少しずつ戻ってきました。母がどうしているかだけ心配です。この子は小さいときに見たことがあるような気がします。懐かしいですが、この人たちにも私が生きていることを知られたくないので会いません。母にだけは逢いたいのですが、僧都さまが書いていらっしゃる人(薫)にはどうしても私はいないことにしたいのです。どうか人違いだと言って下さい」

 浮舟は妹尼にそうお願いするの。





To be continued ✈✈✈






◇「人違いかぁ……」

 やはり浮舟は薫とは逢おうとはしないようですね。


「出家しちゃっても戻ることもできるんだ?」

 そのようです。


「浮舟ちゃんも薫くんのこと想ってるよね。薫くんも迎えに来てくれるみたいだし、僧都さまも還俗させてくれるって言ってるから薫くんのところに戻ってもいいような気もするけれど、そんな気分にはまだなれないのかな」


 いよいよ次話が最終話です。薫と浮舟の行く末を見届けてあげてください。



「ね、ホントに源氏物語終わっちゃうの?」

「永遠に終わらない気がしてたんだけれど」





NEXT↓

54.3 (最終話) 薫の手紙と浮舟の生きる道

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