52.4 蜻蛉のような君

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 その頃、明石中宮さまは女房から今回の薫と匂宮と浮舟の三角関係の話を聞いたの。自分の息子(匂宮)が異母弟の薫(明石中宮は薫が源氏の子だと思っているから)の恋人の浮舟を横奪よこどりしようとしていたことを知ってとても驚いたの。それから薫のためにも匂宮のためにもこのことがウワサにならないよう厳重に口止めをしたの。


 浮舟に仕えていた侍従という女房(宇治川での匂宮と浮舟の密会デートに付き添った女房)は今は明石中宮さまにお仕えしていて、中宮さまのところに来ている匂宮と薫を見かけるの。

「こんなにごりっぱな方おふたりからあの姫君は愛されていたんだわ。どちらかおひとりとお幸せになってくださったらよかったのに……」

 そんな風に浮舟のことを惜しむの。


 明石中宮さまは亡くなった式部卿宮(源氏の弟)の娘が継母に軽んじられていたのを不憫に思い、彼女を引き取り自分の子供の世話役にしているの。宮の君と呼ばれているの。

 匂宮は宮の君が浮舟と血縁があるから(式部卿宮と八の宮は兄弟)、ひょっとしたら浮舟に似てるんじゃないかって気になっているんですって。


 月が素晴らしい夜。薫は女房たちが集まっている部屋に宮の君を訪ねて行くの。同じ皇族で前には薫との縁談の話まであった人が女房になっているのを薫は同情するの。でもどうやら同情だけじゃない別の感情もあるみたい。

 秋の夕暮れ、薫は「はらわたがちぎれるほどにツライ秋の空だよ」なんて漢詩を詠むの。


 匂宮はあちこちの女房たちに手を出したりして昔のオンナ遊びを再開しちゃったみたいなの。

 匂宮の奥さんの中の君はそんなダンナの浮気癖に悩みながらも、薫を頼ったりましてや薫と浮気しようとしたりしない分別のある聡明な態度だったから薫は

「こんなに素晴らしい女性ひとは女房達の中にはいないよなぁ」

 って中の君のことを想うの。


 やっぱり大君や中の君、浮舟のことを薫は今でも想っているみたいね。

 

~ ありと見て 手には取られず 見ればまた 行方も知らず 消えし蜻蛉かげろう ~

(そこにいるってわかっていても手にすることはできなくて、捕まえたと思ったら行方もわからなく消えてしまった。キミは蜻蛉のようだよ)




第五十二帖   蜻蛉


To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ ありと見て 手には取られず 見ればまた 行方も知らず 消えし蜻蛉かげろう ~

薫が失くした浮舟を想って詠んだ歌



◇第五十二帖蜻蛉かげろうでした。

episode52 激流の果て   蜻蛉

52.1 浮舟の死

52.2 薫の涙

52.3 憂いの宇治

52.4 蜻蛉のような君



◇「なんだか後味の悪い話になっちゃったね」

ふたりの男性から想いを寄せられるいわゆる三角関係の恋物語ですが悲劇的な結末となってしまいました。


「三角関係のラブストーリーって胸キュンシチュだと思ってたんだけどなあ」

 今でもよく見られる設定ですものね。


「この三角関係はちっとも胸キュンしなかったよ。何が違ったのかな」


NEXT↓

episode53 流れ着いた舟   手習 

53.1 身元不明の姫



☆こまちのおしゃべり

作者さんから匂宮くんへのメッセージエッセイだよ。


【別冊】源氏物語のご案内

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881765812/episodes/1177354054887565638

ホント、匂宮くんにこれを読ませてやりたいよ。

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