topics45 一筆申し上げます
第52帖
第三部の宇治十帖も終盤に入ってきて激動の展開になってきましたね。ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
匂宮が薫の恋人である浮舟との浮気で引き起こした三角関係が哀しい展開になってしまいました。
浮舟は薫とは違うタイプの匂宮にも惹かれてしまいます。けれども薫に申し訳なくて匂宮を選ぶこともできません。
匂宮は強引に我が物にしようとしてきます。
匂宮と浮舟の関係を知った薫はふたりを会わせないようにします。
匂宮と薫、ふたりからのアプローチに心を引き裂かれた浮舟は死を選んでしまいました。
一筆申し上げます。
におちゃん、何がしたかったの?
大切にしている
中の君は若君も産んでくれたよ?
政略結婚だった正室の六の君のことも素敵な女性だって言ってたでしょう?
はたから見ればこれ以上ないくらいに恵まれているのに一体何を求めているの?
匂宮の唯一のコンプレックスである薫への対抗心が引き起こした略奪愛事件じゃないかと前エピソードで書きました。
それに薫が自分の妻の中の君のことを気に入っているのも匂宮は面白くありません。ふたりは浮気してるんじゃないかとさえ疑っています。
「どうせ俺が死んだらすぐに心変わりするんだろ? 薫と結婚できるもんな」
そんなイヤミなことを中の君に言ってしまいます。しかもこのセリフを言ったのは浮舟と浮気して帰ってきたとき。心変わりして浮気してきたのアンタだろーが! 自分が浮気性だから人も同じように浮気っぽいって疑うのでしょうか。一体どの口が言うのよ。
宇治川の小島での密会デートのときは浮舟に
「薫とはどんなデートしてんの?」
と牽制して、薫の正室は身分の高い人だよ、なんて話を聞かせます。宮中での詩会で雰囲気たっぷりに薫が宇治の橋姫のこと(暗に浮舟のこと)を歌に詠んだことはもちろん話しません。分が悪いもんね。
「薫とは寝るなよ?」
いっぱしにヤキモチ焼いているけど、横盗りしてるのアンタだからね? よく浮舟ちゃんにそんな嫌みが言えたもんだわ。
薫は正式な結婚ではないものの、家を用意して恋人として迎えるつもりだけれど、匂宮はそうするつもりもないようなことも思ってるの。
愛人にして囲ってもいいけど、姉さんの女一の宮のところに浮舟を女房として置いておいて逢いたくなったら遊びに行くのもアリだよな、なんて考えたりもするの。(匂宮にはそういうセフレが多数あり)
ほらね、本気だ、運命だなんて盛り上がっているくせに責任をとるつもりはないのよ。
そのくせ嫉妬深くて
「俺が来るまで薫と
なんてことを言ってくるの。だから後から来て無理矢理男女の関係に持ち込んだのはアンタでしょうに……。それでいて薫と会うなってどういうこと? そもそも男子が女子に逢いに通ってくるのに女子側が男子の来訪を断れるわけないでしょうに。
薫のモノを
「絶対に迎えに行く」
これだって浮舟への愛情から言ってる? 薫の大切にしているものをとりあげたいだけじゃない? 薫のモノを隠してしまいたいだけじゃない? 一生浮舟のことを愛そうとか大事にしようとか思った?
あなたの直情的な行動は下心丸出しの「恋」かもしれないけれど、真心(間心)の「愛」ではないでしょ?
この上ない身分に恵まれた容姿に才能
誰だってアナタを認めているし憧れて慕ってる
何が不満なの?
「薫が一番で匂宮は二番」
誰かにそんな風に言われた?
アナタが勝手に思い込んでいるだけでしょう?
匂う兵部卿宮に薫の大将
並びたつ宮中の華
才能豊かで魅力ある公達
クールな薫に華やかな匂宮
充分評価されてるよ。何が不満なの?
役職や給料に身長など
数字で比べることができて順位をつけられるものもあるけれど
人としての素晴らしさやその人の魅力を測るものさしなんてないでしょう?
その測れないものでも優位に立っている証明がほしいの?
その証明のために浮舟を利用したの?
恋人の薫よりも自分を選べば自分の方が薫よりも上だって満足したかったの?
仮に浮舟がアナタになびいたからって誰にそれ自慢するの?
達成感は得られるの?
薫に勝利宣言でもしたいの?
それで気は済むの?
アナタの嫉妬心や対抗心がとてつもない悲劇を生みだしたことになるわよね。
アナタ自身も傷ついたでしょうに。
でもね。
あのふたりの傷は計り知れない。
自分のことしか見えていないだろうけれど
ふたりのこと想いやってごらん?
アナタの親友
初恋の姫に死に別れ
ようやく見つけた彼女と幸せになるはずだったのに
アナタが「千年先まで愛するよ」と口説いた彼女
悩んで苦しんで身を投げて
恋も
愛も
もののあはれも
生きる喜びも
大切な人たちも
手放した
誰の所為だと思う?
そんなにまで欲しかった?
欲しかったのは浮舟じゃなくて
薫への優越感でしょ?
恋人を亡くして涙を流す薫を見て
アナタが得たものって何?
におちゃん
アナタもっと幸せになれるはずよ
すぐ近くにある幸せに気づいて
大切なものを失くす前に気づいてね
大好きなおばあさまから譲られた二条院
その自宅で一緒に暮らしている大切な人
豊かで穏やかな日々の暮らし
紫の上おばあさまや源氏おじいさまに顔向けできないようなことをしないで
匂宮クン、あなたの幸せを祈ります。
あなたも周りの人を幸せにしてあげてください。
パートナーや大切な人の幸せを自身の幸せと感じられるようになってください。
人を護り
人を許し
人を認め
人に与え
人を愛し
人から愛されるように
かしこ
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関連するエピソードはこちら。よかったらご覧になってくださいね。
episode52 激流の果て
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881684388/episodes/1177354054886938785
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