52.3 憂いの宇治

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 薫もまた宇治へ行って、女房から匂宮と浮舟の関係や入水のことを聞きだすの。まさか自死していたなんて思ってもいなかったから、真相を知った薫はやるせない気持ちでいっぱいになるの。

 どうやら浮舟も匂宮に惹かれてしまったんだ、それでも僕とも別れることもできなかった。僕たちが彼女を板挟みにして苦しめてしまったのか。この宇治川さえなければ彼女が身を投げることもなかったのに。大君といい、浮舟といい、恋しい人が亡くなってしまう「宇治(憂し)」という言葉でさえうとましく思ってしまう薫だったの。


 浮舟のお母さんの中将の君のところに薫から連絡が行くの。娘を失って悲しみに暮れている彼女を見舞い、幼い浮舟の弟たちの将来の面倒も見るつもりだという内容だったみたい。

 中将の君は今まで浮舟が薫と結婚して宇治にいたことを夫の常陸の守ひたちのかみに話していなくて、ようやく打ち明けたの。常陸の守は権力に弱い田舎者だから、自分よりはるかに身分の高い薫の名前が出てきて継娘の死を残念がったんですって。

 四十九日の法要は盛大なものになったの。今上帝の耳にも噂は届いていて、自分の娘で薫の正室への配慮で浮舟の存在を隠していたんだなって薫のことを思いやってあげるの。薫も匂宮もまだ悲しみが癒えることもないみたい。でも匂宮は他の女性に手を出して心の慰めにしているんですって。


 匂宮のお兄さんの二宮が式部卿宮になったの。お姉さんの女一の宮には小宰相の君っていう女房がいるんだけれど、楽器の演奏が上手で機転も利く美人で匂宮は気になっているの。

 でも薫が先に付き合っていたみたいで、匂宮はまた薫から彼女を奪いたいとあれやこれや誘うんだけど、小宰相の君はなびいてくれないの。ただ薫と小宰相の君も仲の良い友人同士という関係だけで男女の仲ではないみたいなんだけどね。


 明石中宮さまが源氏や紫の上の法要を催し、その片付けのときに薫は偶然女一の宮(匂宮のお姉さん)の姿を見てしまって、あまりの美貌に心奪われちゃうの。薫の正室奥さんとは異母姉妹なのに全然似ていないの。

 自宅に戻った薫は女一の宮が着ていたみたいな衣装を奥さんに着せてみたりしているの。おまけに明石中宮さまに自分の妻がお姉さんの女一の宮のことを恋しがっているなんて嘘までついて女一の宮から奥さんに手紙を書いてもらえるようリクエストするの。

 思った通りの素晴らしい手紙で薫はまた心を奪われるの。そもそも大君が生きていてくれたなら奥さんとは結婚せずに大君だけを愛し続けていけたのに。彼女が亡くなってしまい、中の君と結婚しようかなと考え、浮舟を愛人として匿い、今は女一の宮に恋している自分に「なんて愚かしいんだ」と薫は落ち込むの。




To be continued ✈✈✈




◇「なんなの? ふたりとも浮舟ちゃんショックから立ち直って他の女の人のことを気にしてるの?」


 薫は浮舟のことを偲んでいて、浮舟の家族のことも気にしていますが、匂宮の姉の女一の宮に一目ぼれしたようです。


「それに匂宮はまた薫と仲のいい人を横盗りしようとしているの? 薫の涙を見てなんにも感じなかったの? バカなの?」

 こまちちゃん板を持ってきました。


―― バキィィィッ! ――

「バカ確定だわ」


 板三枚を普通に割れるようになっています。こまちちゃん、この1年でたくましく修練できているようです……。え? 今度は足蹴りも?! えっと部活は何部だったかしら……。





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52.4 蜻蛉のような君

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