52.2 薫の涙
✈✈✈Let' go to SenmojiGenji
匂宮は正気を失ったように数日を過ごしたの。病気ということにしているけれど、あまりの落ち込みように周囲は何事かって心配しているわね。匂宮の様子を聞いた薫もやっぱり浮舟とは深い仲だったんだなって確信するの。
皆が匂宮の見舞いに行っているのに自分だけ行かないのもヘンに思われると思った薫は夕暮れに匂宮を訪ねるの。淡々とお見舞いの言葉を言う薫の姿にどうしてそんなにも取り乱さずクールでいられるのかって匂宮は思うの。
「さすが悟り切ってるお前は世の中のことに冷静なんだな」
でも薫も浮舟のことを話し始めると涙をこらえることができなくなったの。
「大君の妹で僕の恋人だった人が亡くなったんだ。身分が低いからね、妻にはできなくても一生大切にするつもりだった彼女が亡くなったんだ」
薫の涙はとめどなく流れるの。匂宮はそしらぬふりをするの。
「ああ、その人のことなら昨日ちらっと聞いたっけな……」
そんな風に言いながらも初めて見た薫の涙に匂宮も言葉が詰まっちゃうの。
「具合の悪いときにつまらない話だったよね」
薫はそう言って帰って行ったの。
「人は木や石じゃないんだ。僕にだって感情はあるんだよ」
薫はひとりつぶやき悲しみにくれるの。
春になって匂宮が二条院で中の君と一緒にいるところに薫からの手紙が届くの。
~ 忍び
(ホトトギスが鳴いているけれど、あの子のことを思い出して君(匂宮)も泣いているの?)
中の君がいるので、なんか意味深な歌だよね、なんて匂宮はごまかすの。
~ 橘の 匂ふあたりは ほととぎす 心してこそ 鳴くべかりけれ ~
(ホトトギスもさ、時と場所を考えて鳴くもんだぜ)
でも実は中の君は夫の匂宮と
「キミがあの子が誰か話してくれなかったから気になっちゃったんだよ」
そんな言い訳もしたみたいよ。
月が改まり、匂宮は浮舟の最期の様子を知っている女房を自宅に呼んで詳しく話を聞くの。どんなに恐ろしい思いをして川に飛び込んだんだろうと想像するだけで匂宮は苦しくなり、自分がそこにいたなら止めてやれたのにって悔やむの。匂宮と女房は一晩中浮舟のことを語って過ごしたの。
To be continued ✈✈✈
🖌Genji Waka Collection
~ 忍び
薫が匂宮に浮舟のことを匂わせて詠んだ歌
~ 橘の 匂ふあたりは ほととぎす 心してこそ 鳴くべかりけれ ~
薫の追求をかわして詠んだ匂宮の歌
◇「つらいね。薫くんの涙は」
感情表現の激しい匂宮は正気を失い屋敷に閉じこもりました。薫は表面上は冷静にしていましたが、匂宮の前で涙を流しました。
「匂宮が浮舟ちゃんを横盗りしなきゃこんなことにはならなかった」
「中の君ちゃんも全部知ってたんだね。でも責めることはできなかったんだね」
「なにが『キミが話してくれないから気になっちゃった』よ……」
「あんなに怖がっていた恐ろしい川に飛び込ませた元凶はアンタじゃん」
「匂宮……」
こまちちゃん、静かに怒っています。
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52.3 憂いの宇治
☆こまちのおしゃべり
匂宮についてのエッセイです。読んでみてね。
【別冊】源氏物語のご案内
topics44 コンプレックスの果ての略奪
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881765812/episodes/1177354054887498387
匂宮……、許すまじ。
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