40.4 皆の悲しみ

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 夕霧は葬儀後も二条院で源氏に付き添いながら、紫の上のことを偲んでいるの。あの台風の日に見かけたことや最後の姿を見たことを思い返しているの。


 ~ いにしへの 秋の夕べの 恋しきに 今はと見えし 明けれの夢 ~

(昔お見かけした秋の夕暮れを恋しがっているのに、ご臨終のお顔を見てしまったなんて夢のようです)


 源氏は明けても暮れても涙がちに過ごすの。もうこの世に未練はないけれど、これほど心を乱していては出家しても勤行もできないと思っているの。


 前太政大臣(元頭中将)からもお見舞いの手紙が届くの。


~ いにしへの 秋さへ今の ここちして れにし袖に 露ぞ置き添ふ ~

(紫の上さまが亡くなられた悲しみに加えて妹(葵の上)を亡くした悲しみまで重なるようだね)


 前太政大臣の妹で源氏の最初の正室だった葵の上(夕霧のお母さん)が亡くなったのも秋だったからそのことを思い出して源氏を思いやってくれるの。


~ 露けさは 昔今とも 思ほえず おほかた秋の 世こそつらけれ ~

(ただ秋だから泣けてくるんだよ。昔も今もね)


 源氏は紫の上を失った辛さを正直に打ち明けると女々しいと思われるのがイヤだったみたいね。


 秋好中宮からも手紙が送られてきてみんな源氏のことを心配しているのよね。


~ 枯れはつる 野べをうしとや 亡き人の 秋に心を とどめざりけん ~

(紫の上さまは枯れ果てた野がお嫌いで秋をお好きになれなかったのでしょうか)


 秋好中宮と紫の上がした「春と秋、どっちが素晴らしいか対決」を踏まえての歌のようね。


~ 昇りにし 雲井ながらも 返り見よ われ飽きはてぬ 常ならぬ世に ~

(中宮という高い身分になられても忘れないでください。わたしはもうこの世に飽きてしまいました)


 千年も一緒に過ごしたいと願った最愛の紫の上。何をしてもどこにいても紫の上を失った悲しみや寂しさは薄れることはなくて、ただただ月日だけが過ぎ去っていくの。

 紫の上の法事などは源氏のかわりに夕霧が仕切るの。明石の中宮も紫の上のことを忘れる時がないほどに恋い慕っているみたいね。



第四十帖 御法

 





To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

 ~ いにしへの 秋の夕べの 恋しきに 今はと見えし 明けれの夢 ~

 夕霧が紫の上の遺体と対面したあとに詠んだ歌



◇第四十帖御法でした。


episode40 消えゆく紫の露   御法

40.1 最後の春

40.2 最後の夏 そして最後の秋

40.3 最愛の人

40.4 皆の悲しみ





 最愛の人、紫の上が旅立ってしまいました。弱っていく紫の上を見守りながら悲しむ源氏。そして亡くなってしまった紫の上を想う源氏。歎き悲しみ悲嘆にくれる源氏が描かれていますね。


「源氏もだけれど、夕霧くんや明石の中宮さまもみんな悲しんでいるよね」

 当時の理想の女性像として描かれたであろう紫の上。皆が彼女を慕って憧れていましたね。


「紫ちゃん、どんな一生だったって思っているのかなぁ」

 帝の次の位の准太上天皇である源氏の最愛の妻。美しさ優しさ賢さを合わせ持ち、源氏を愛し、周りを気遣い、貴賎の差なく皆から敬われました。

 少女の時に源氏に見出され育てられ、愛され、そして裏切られもし、それでも最後まで源氏を想い天へと召されました。

 




NEXT↓

episode41 思慕、痛恨、後悔、懺悔   幻

41.1 彼女のいない冬


 ☆こまちのおしゃべり

【別冊】源氏物語のご案内

こちらのエッセイもぜひ読んでみてね。


 topics34 紫の思慮、紫の主張

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881765812/episodes/1177354054883841761

紫ちゃん……。

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